新年度がスタートし、数週間がたちました。それぞれの学級のカタチが見えてきたと思います。うまくいっている学級では、その発達段階に合った「集団」として目標に向かっていく様子が見えることでしょう。
年度始めには、校長から学校経営方針が出されます。異動がなかった先生方は、何となく分かると思います。異動してきた先生方も分かったつもりになりますが、具体はよく見えないと思います。いずれにしても、それぞれの経験をもとに、子どもを迎え、学級をつくっていく準備を大急ぎで行います。
これは、毎年見られる光景ですが、何か足りないように思うのです。その「何か」を気にしながら、いつも4月を過ごしてきました。
みなさんは、何だと思いますか。
今年度は、このことを具体的に考え実践してみました。
その「何か」とは、「統一感」のようなものです。異動のなかった先生方はそれまでの流れを知っていますから、学校課題を知った上で、その解決法などを考えながら指導をします。しかし、異動してきた先生方は学校経営方針やちょっと同僚から聞いたことをもとに、それまでの経験を加味して指導することになります。これでは「統一感」が見られないのは当たり前です。もっとも、異動のなかった先生方の中にも、指導の温度差はあるものです。
今年度、私は「学力向上コーディネーター」というものに指名されました。この学力向上コーディネーターとは、次のことに基づいています。
群馬県は、2013年度の全国学力テストで県内の小学校の国語と算数の平均正答率は全国平均を下回った。一方、中学校の国語と数学は全国平均を上回ったが、全国平均との差は年々縮まってきている。
このため県教委は、市町村教委を通じて全小中学校に校内組織「学力向上委員会」の設置を要請。委員会で中心的な役割を果たす教員を「コーディネーター」に指名して、学力向上計画を策定するよう求めた。
つまり、群馬県教育委員会は各校に学力向上委員会と学力向上コーディネーターを設置させて、学力テストの点数を上げようと考えたわけです。
それはさておき、学力形成が学校の第一義的な使命ですから、前述の個人的に気になる「統一感」と合わせて、学力向上コーディネーターとして、4月7日の始業式・入学式の終わった午後に、第1回校内研修を行うことにしました。
この校内研修のねらいの一つは、過去2年の校内研修の流れを伝達や確認し、本当の共通理解を図ることです。もう一つのねらいは、学級づくりと授業づくりを同時進行させる必要性(論理)を模擬授業を通して理解してもらうことです。
当日のテーマは、「自分から学び伸びる子どもを育てるために4月から仕掛けること」です。
これまでの2年間は、「互いのよさを認め、学び合う児童の育成」をテーマに、一年次はそのベースとなる人間関係づくり(学級づくり)に重点を置いてきました。二年次は前年度を踏まえて、「教えて考えさせる授業づくり」に重点を置き、授業研究を多めに行ってきました。こうしたことを資料を提示しながら、確認しました。
そして、年度始めにやるべきことは何かを問いました。つまり、年度始めから年度末のゴールイメージをもつことの大切さを話し、現段階でのゴールイメージをもってもらいました。
次に、「学級経営」とは何かを考えてもらいました。「経営」とは、「経」と「営」の意味から、ゴールイメージに向けて、計画に従って正しい道筋や道理を教えることだと話しました。
つまり、経営を進めるためには、年度始めにやるべき「ルールとリレーションづくり」ができなければならないとまとめました。
さらに、「ルールとリレーションをつくる」とは、教育の「縦糸を張り、横糸を紡ぐ」ことであると続け、縦糸・横糸理論を紹介しました。
最後に、これまでの校内研修の流れとルールとリレーションをつくる模擬授業を行いました。国語の説明的文章の読解を例に、響き合う音読や、個で考えペアで学び合う授業を体験してもらいました。
70分余りの校内研修でしたが、アッという間でした。参加した先生方も最初は「早く終わらないかな」という雰囲気をもっていましたが、模擬授業になると楽しそうに話し合うなどしていました。事後に、「全部が勉強になって、明日からやってみます。」というようなことを言っていました。
教師も子どもも知っているつもりになっていることがあります。ただ、知っているだけでなく、理解してでき、自分を伸ばすようにつなげられたらよいと思っています。
私が長年考えていた研修(年度始めのなるべく早い時期に本当の共通理解を図る)が、勤務校でできて満足しています。ただし、今後、フォローアップやシープドックモチベーションの工夫が必要だと考えています。
みなさんの勤務校の校内研修は、いつからでしょうか。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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