2014.03.28
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『まるごと教育』で子どもと子どもたちを育てる

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 この3月末で「教育つれづれ日誌」の執筆を始めて5年が終わります。一つの区切りとして、今回でレギュラーでの執筆は降ろさせていただくことにしました。
 これまでの原稿数は、121本になります。この間、一貫して変わらなかったものがあります。それは、テーマにある「『まるごと教育』で子どもと子どもたちを育てる」という姿勢と実践です。

 『まるごと教育』とは私の造語で、2005年度に始めたので、今年で10年の節目となります。
 最初は、子どもの長所だけでなく、短所も受け入れるといった「子ども(個)のすべてを受け止めた教育」というイメージを実践し、その子のよさを伸ばしていこうとするものでした。
 しかし、それだけでは子どもの伸びが鈍かったり、加速しなかったりすることに気付きました。そこで、一人ひとりの子どもを個別に受け止めるだけでなく、学級集団の中の一人としても受け入れ、個としても集団としても伸ばしていくようにしました。こうすることで、個のよさと集団のよさが相乗効果を発揮するようになり、伸びが加速されるようになりました。同時に、「授業づくりと学級づくりの一体化」を図り、常に両者が連携した教育を行うことを心がけるようになりました。つまり、授業づくりを進めることが学級づくりにもなり、学級づくりをすることで授業効率が高まるような教育を行い、片寄りのない『まるごと教育』の実践へと進化していきました。
 ところが、学校だけ(学校にいる時だけ)の指導では限界があることが分かりました。そこで、家庭の力を借りて、学校でも家庭でも同じ姿勢で子どもを育てるという『まるごと教育』を心がけるようになりました。つまり、教師として子どもを育てるだけでなく、保護者も育てるという『まるごと教育』を目指すようになってきました。具体的には、学級通信や授業参観、電話連絡などを通して、意図的計画的に担任の考えを伝え、同一歩調で子どもを育てていくことをお願いしました。
 一方、教育には日本のよさや伝統文化に基づく「不易」の部分があります。一方、総合的な学習の時間、英語活動、ICTの導入、学び合いなどの「流行」の部分もあります。「不易か流行か」ではなく、「不易も流行も」バランスよく取り入れて、目の前の子どもと子どもたちを育てる『まるごと教育』を模索するようになりました。
 さらに、2013年度からは子どもと子どもたちの環境や包んでいる空気を創っていく「新環境教育」を取り入れた『まるごと教育』に移行しています。まずは、教室環境を整えることです。整理整とんや掲示物の在り方、黒板のきれいさといった可視環境とともに、不可視の環境にも重点を置きます。不可視環境とは、あいさつや返事ができる、否定的な言動がない、進んでやるべきことができる、よい人間関係であるといったことです。同時に、家庭環境や地域環境にも目を向けて、啓発的な活動をします。ただし、無理強いはしないことがポイントです。前述のような環境に「したくなる環境づくり」をすることが、教師の重要な仕事なのです。つまり、教師は率先して見せたり、一緒にやってほめたりしながら、ジワジワと価値付けて評価をすることで、「したくなる環境」を整え、「する環境」へとシフトさせるのです。もちろん、家庭や地域に働きかけながらです。
 最新の『まるごと教育』は、このようなものです。過去の実践を通して、いずれにしても「子どもと子どもたちを育てるのに有効」であると自信をもって言えます。新年度からの参考にしていただければと思っています。

 今、教育現場は多忙感とともに、失望感が大きく広がっています。それは、あまりにもミクロの視点で子どもや教育を見過ぎているからかもしれません。時に、マクロの視点でとらえることで、新たな方向性を見いだすことができるのではないでしょうか。

 私は10年目の『まるごと教育』を展開しようとしていますが、毎年、変化と進化させています。また、それを楽しんできました。
 ただ、もう一度、自分を見つめ直してみようと考え、「教育つれづれ日誌」のレギュラー執筆は降りることにしました。この5年間、つれづれ日誌の編集者様と読者のみなさんには、お世話になりました。今後は、イレギューラーで執筆をしていきたいと思っています。
 本当にありがとうございました。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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