2014.03.11
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教師のミッション

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

カーポート 玄関前 家の前

 教師のミッションは、「子どもを育てること」だと考えています。
 では、どういう子どもを育てたらよいのでしょうか。いろいろな考え方や言い方があると思いますが、2月の大雪の際に改めて考えたことをお知らせします。

 私は群馬県南部に住んでいますが、例年、この地域の冬は冬晴れの乾燥した晴天が続きます。ところが、2月7日は珍しくけっこうな積雪を記録しました。気温が低いこともあり、1週間たっても溶けないで残っている所もありました。そこへ、2月14日からの大雪がおそってきたのです。まさか先週の積雪を大幅に上回る降雪があるとは、誰も考えはしませんでした。正に、『想定外』の出来事だったのです。
 15日朝には、まるで雪国のような風景が広がり、一晩中降り続いた雪は、観測史上最高となり、様々な障害や被害をもたらしました。
 ありえない事実の出現に対して、どう判断し行動するのかが問われることになりました。

 私は15日朝、激しく降り続く雪とともに、カーポート上の50センチを越える積雪を目にしました。先週の積雪は30センチ程度でしたが、あわてて雪下ろしをしたぐらいだったのです。初めて見るその光景に「危険」を感じました。ちょうど居合わせた隣家の方と話をしながら、降りしきる雪の中で雪下ろしを始めた瞬間、大きな音がしました。隣家のカーポートがつぶれたのです。幸い、隣の方は柱付近にいたため、けがなどはしませんでした。それを見て、安心するとともに、それこそ必死で雪下ろしを始めました。ハイルーフ用の背の高いカーポートで、道具もなく、風雪が強まる中、2時間かけて9割の雪を降ろしました。
 朝起きて、「危険」と感じ、降雪の中でも「雪下ろしをする」と判断し、行動したことが被害を出さなかったことにつながったと思っています。

 今回のみぞうの大雪は、群馬県・山梨県・埼玉県を中心に大きな被害が報道されるとともに、政府・行政や報道機関などの対応に対して、様々なコメントやつぶやきがSNSなどでありました。つまり、想定外の出来事に対して、どのように対応や行動をしたかが大きな話題になったということです。

 大雪の影響で通行止めが続いていた中央自動車道の談合坂SAで、山崎製パンのトラックが集荷のパンを立ち往生したドライバーらに無料で配布していたことが、ツイッターを通して広がったというのがありました。これは、SAでパンをもらった人が写真ととともに、
「昨日、ヤマザキパンさんのドライバーの方に差入れ頂きました。『好きなだけ持ってってよ!』と。今は談合坂SAで規制解除待機中、大事な食事となっております。ありがとうございました。」
とつぶやいたことによるそうです。
 山崎製パンは「とくに会社として指示したものでも、非常時の対応として(商品の配布について)の規定があるわけではありません。運転手が機転を利かしたのでしょう。」と話しているそうです。それが事実とすれば、山崎製パンのトラック運転手が、判断し行動したということになります。
 今、人は体験したことのない困難や危機に直面した時に、どうに考え判断して行動するのかが問われる時代です。東日本大震災の時も、様々な場所で、いろいろな条件の中で、決断・行動を迫られた人たちがいたはずです。

 今回の大雪を実体験する中で、私たち教師のミッションは、どんな困難や危機、想定外の出来事に出会った時でも、『生きるための力を発揮できる子どもを育てること』ではないかと強く思いました。もちろん、自分だけでなく、自分と身近にいる人とともにです。

 同時に、天台宗宗祖伝教大師最澄の『忘己利他』(己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり)」という言葉を思い出しました。自分のことは後にして、まず人に喜んでいただくことをする、それは仏さまの行いで、そこに幸せがあるのだという言葉です。つまり我欲が先に立つような生活からは幸せは生まれないのだということです。

 これからも、「自分で決められる」「よりよい判断ができる」「そして、行動できる」子どもであり、「自らを幸せに導ける」子どもを育てていきたいと考えています。
 そのために教師修行と人間修行を続けていきたいと思っています。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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