「我以外皆我師也」という言葉を聞いたことがありますか。
私は何年か前にどこかの講演会で、講師の方が使っていたのを聞いて知りました。言わんとすること(人でも物でも皆、自分に何かを教えてくれる先生だという意味)はすぐ分かりましたが、何となく気になっていたことがあります。それは、語源です。
調べてみると、小説『宮本武蔵』などで知られる吉川英治氏の造語だということが分かりました。この「我以外皆我師也」という言葉は、吉川氏の人生哲学を反映した座右の銘であり、好んで使っていたそうです。
聞けば納得しますが、何かを教えてくれる先生と思えなかったり、教えてもらっても取り入れられなかったりするのが実状です。
さて、2014年1月17日に明治図書より
「スペシャリスト直伝!<失敗談から学ぶ>学級づくり・授業づくり成功の極意」
という共著本(教育書)が出版されました(過日のつれづれ日誌で西村健吾先生も紹介)。
私は初めて単行本の執筆者の一人をさせていただきました。そこでは、教師としてのライフヒトストリーとそこから生まれた教育哲学及び実践を紹介しました。
そんな私のキャッチコピーが、「何事・何人からも学ぶ」です。前述した「我以外皆我師也」を知る前からの実践です。
人は、人から学ぶことは多いものです。そして、一番大きな影響を受けるものです。私も身近な人からのアドバイスや、著名な先生から直接話を聞くことで、自分の実践や生き方を変えてきました。
しかし、私の場合は、直接出会った人以外から学ぶことが多いのです。それは、「楽しみ」の中から学ぼうとしていると言ってもよいでしょう。つまり、自分が楽しいと思ったことと、教育(実践)とをつなげることを考えているのです。それを私は『教育イノベーション』と呼んでいます。
この『教育イノベーション』こそが、私の「学び道」(まなびどう)なのです。そんな『教育イノベーション』を、これまでの「教育つれづれ日誌」をもとに振り返ってみることにします。
もう30年以上もライフワークとして調査・研究をしているホタルからは、多くのことを学びました。最初は単に昆虫として、そして自然保護の象徴として扱っていましたが、地球環境の中で「生きる」ことを教えてくれる「師」と考えるようにもなってきました。つれづれ日誌では2009年7月1日を始めに、2010年1月13日、同年7月13日、2013年7月5日などで取り上げました。また、「ホタル狩りの唄」からも学べることを、2010年6月29日に書きました。
昆虫つながりでは、アサギマダラという渡りをするチョウからの学びもありました(2009年8月26日)
すばらしい自然や地域、旅行先では、自分のそれまでのパラダイムを変える学びがありました。たとえば、尾瀬(2009年8月12日)、珠美の島=久米島(2011年2月11日)、渡良瀬橋(2011年5月13日)、京都(2013年12月10日)などがあります。また、日本だけに止まらず、外国からも様々な学びがありました(北欧2013年8月12日、2013年8月29日)。
日本の歴史や伝統から学ぶことも多く、足利学校(2010年5月18日)、和同開珎(2010年8月24日)、二宮金次郎(2010年10月22日)などがあります。また、ただ見るだけでなく、実際に体験することで学びを実感することも書きました(長良川の鵜飼い、2012年8月10日)
一方、流行からも学びを得ようとしています。つまり、流行ると言うことは、それなりに理由があるはずです。その流行る理由を自分や子どもたちの学習に活かせないかを考えたものです。アイドルグループAKB48(2011年8月5日)や、そのプロデューサーである秋元康さんから何を学べるかを書きました(2011年8月19日)。
そのほかにも、市民活動から学べることについては毎年書いてきました。テレビ番組からは、その内容や企画を深読みすると教育に活かせることがたくさんあることも書きました。
さて、私の『教育イノベーション』は、楽しみをベースにしながら、自分の教育の新機軸を常に見つけようとするところにあります。それは、なぜでしょうか。
人はいつのまにか「学ぶ心」を忘れ、他人の未熟さばかりが気にかかるようになるものです。そうなってしまうと、自分の成長も止まってしまいます。むしろ後退するようなことにもなります。そういう人間になりたくないという思いがあるからなのです。
鎌倉時代の禅師・無住道暁の言葉に
「人をそしりては、我が身の失をかえりみる、これ人を鏡とする心なり」
というのがあります。
前記の「我以外皆我師也」と合わせて、私の『学び道』を支える言葉です。これからも、様々な人・物・心から学んでいきたいと考えています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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