2014.01.24
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若い先生たちへのメッセージNO.17 「子どもたちのキャパシティーを感じとろう!」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 新学期が始まり、学校に子どもたちの元気な声が帰ってきました。3学期はとても短く、あっという間に終わってしまいます。卒業関係の行事をこなしたり、学年のまとめをしたりと慌ただしい日々になるかもしれません。また、風邪などの流行しやすい時期でもあります。まずは、体調管理をしっかりと行い、心身共に健康であることを一番の目標にしてがんばっていきましょう。

 

 ところでみなさんは、子どもたちに何かをやらせようとするときに、子どもたちのキャパシティーを考慮に入れていらっしゃるでしょうか。
 6校時まである日には、子どもたちの学校生活は実に7時間を超えます。これは、大人の勤務時間に匹敵するわけで、とても長い時間だと思います。

 家庭にいるときのように、寝転がったりテレビを観たり、あるいはゲームをしたりすることなく、多くの子どもたちと一緒に勉強をしたり遊んだり、係の活動などをこなしていくのですから、特に低学年の子どもたちにとっては厳しい側面があると思います。

 学校5日制が実施される以前は、土曜日にも授業があったとはいえ、月曜日から金曜日には5校時までしか授業はありませんでした。高学年では6校時まで授業があったり、クラブ活動や委員会活動があったりしたかもしれませんが、低学年の子どもたちは、おおむね午後2時過ぎには下校することができたのです。

 ところが、今は2年生であっても6校時までの授業が行われています。まだ幼い子どもたちに、7時間を超える学校生活を、いかに楽しいものにしていくかは、教師の力量にかかっていると言えます。それにはまず、子どもたちのエネルギーの配分や、緊張感の度合いを計算に入れて指導しなければなりません。言い換えれば、キャパシティーを考慮して指導していく必要があり、週案通りに授業を進めることだけが、最善の方法とは言えないのです。

 

 さて、子どもたちのキャパシティーをコップの水に例えてみましょう。コップにひたひたの水が入っているときに、さらに継ぎ足したらどうなるでしょうか。水は溢れてしまいますね。それと同様に、子どもたちのキャパシティーがいっぱいだと感じたときには、それ以上の指導をしたとしても、大きな成果を期待することはできません。

 そんなときには、気分転換が必要です。ちょっとした遊びを取り入れたり、授業の内容を活動性の高いものに変更したりするのです。教師がおもしろい話をして笑わせることも、効果のある方法です。そうすることによってリラックスでき、コップの水はあふれないで内部に吸い込まれていきます。こうして、注いでも受け取れるだけの隙間ができるのです。

 キャパシティーの大きさには、個人差があるかもしれません。それから、環境にも影響を受けます。暑い日には誰でもキャパシティーは小さくなるでしょうし、疲れているときにも同様です。時間割によっても、左右されることがあるでしょう。

 

 教師が授業を行っていく場合、子どもたち一人一人のキャパシティーに配慮することが大切です。特に発達に偏りがあり、こだわりが強かったり、ストレスを感じ易かったりする場合、キャパシティーに配慮することは、トラブルを避ける上でも重要なポイントになります。

 しかし一方で、クラス全体としてのキャパシティーを感じ取ることも大切です。学習の成果を効率的に高めるためには、子どもたちの醸し出すクラス全体の空気を読み取って、適宜リラックスさせる時間を挟み込んでいく必要があるからです。一人一人を観察するのと同様、クラス全体を読み取って動かしていくという、ダイナミックな感性を培っていきたいものです。

 また、自分自身のキャパシティーにも敏感でいたいと思います。教師の心や身体に余裕がなければ、子どもたちといい関係を保ちながら、工夫された授業を行っていくことができなくなるからです。効率よく仕事を進め、休日には仕事を忘れて楽しむ時間も作っていきましょう。 

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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