2014.01.15
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冬にホタルが飛んだ!

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

カイジ浜 羽ばたき1 羽ばたき2

 ちょうど4年前、2010年に「冬の光」というつれづれ日誌を投稿・公開しました。
 そこでは、私の住む群馬県から2000キロも離れた西表島で、オオシママドボタルの成虫(オス)を捕獲(2009年12月24日)し、感動の光を見たことを記しました。

 その後、2010年12月には久米島に行き、久米島ホタル館で学び、4日間にわたり現地を調べました。しかし、成虫はもちろん、幼虫を見つけることもできませんでした。
 2012年1月に、今度は宮古諸島に行きました。ここでは、宮古島を拠点にして、池間島・来間島・伊良部島・下地島の5島を回って調べましたが、手がかりもつかめませんでした。
 この2回の調査でちょっと失望感を感じ、素人調査では冬にホタルを見つけることはできないのではないかと思い始めていました。
 それでもあきらめきれず、2013年12月に再度、石垣島を拠点にした冬のホタル調査をすることにしました。今回は、八重山諸島の石垣島・西表島・由布島・竹富島・小浜島・黒島の6島を、5日間の日程で調べることにしました。

 調査ターゲットとなるホタルは、日本最大のオオシママドボタルです。オスの成虫は2cm近くで、10月から1月にかけて羽化します。ですから、この時期にホタルの調査ができるのです。文献に基づく生息地としては、石垣島、西表島、竹富島、黒島が知られています。

 12月24日に、西表島に行きましたが、あいにくの雨。仲間川マングローブクルーズをしながら、仲間川の周辺を調べましたが、風雨が強く、西表島では見つけることはできませんでした。前回も雨でしたが、見つけられたのですが…。
 続いて、西表島から水牛車に乗り、由布島へ渡りました。相変わらず、風雨が強かったのですが、島内を歩いて調査しました。時間が限られる中、もうだめかと思った瞬間、あやしい昆虫が目の前を横切りました。あわてて捕獲したところ、オオシママドボタルです。この由布島では、初めての生息確認となりました。

 12月25日は、赤瓦の家屋と星砂で有名な竹富島に渡りました(前回の予備調査では未発見)。今回は西桟橋のビーチから調査を始めました。コンドイビーチから星砂で有名なカイジ浜(写真 左)。観光客は星砂探しに夢中になる中、熱帯植物の中でホタルを探していると、にわかに小雨が降ってきました。すると、またしてもあやしい昆虫が飛び出しました。今度は確信をもってゲット。案の定、オオシママドボタルでした。気をよくして、集落に戻るために自転車をこいでいると、あっちからもこっちからもオオシママドボタルが飛び出してくるではありませんか。夢のような竹富島調査となりました。
 午後は、小浜島に渡りました。この島は10年ほど前にNHKの朝ドラ「ちゅらさん」で有名になった島です。小さい島ですが、ほぼ中央に大岳(うふだき)という99mの島の最高峰の山があります。とりあえず、そこに自転車で向かいました。しかし、ホタルがいそうでいない、飛びそうで飛ばない雰囲気がありました。そんな中、山頂展望台まで285段の階段を上りました。すると、その上部の階段に潰れたオオシママドボタルを見つけました。ただ形は崩れていなかったので、大切に持ち帰りました。さらに、もう一頭、なぜか死んだホタルを発見しました。そのあと、藪の中などを必死に探しましたが、生きたものは発見できませんでした。それでも、小浜島でのオオシママドボタル発見は世界初です。自己満足に浸りながら「ちゅらさん」のこはぐら荘とシュガーロードを見学してきました。

 12月26日は、石垣港から黒島に向かいました。黒島は人口200人余りに対して、牛が3000頭以上の牛の島です。周囲約13kmの小さな島ですが、その一部でオオシママドボタルの存在が確認されています。9時20分の船で石垣港を出発しました。この日は海上強風警報が出ていて、波の高さは4~5mで、船はかなり揺れました。西表島や波照間島行きは欠航となっていました。9時50分に黒島ターミナルに到着。上陸すると、もの凄い強風。歩くのも困難なくらいです。調査はもちろん、便数の少ない帰りの船が欠航になる心配がありました。そこで、仕方なく9時55分発の石垣港行きの船に乗りました。黒島上陸時間、わずか2分でした。残念ですが、石垣島に戻れなくなっては大変ですので、調査はあきらめました。

 12月27日は、いよいよ拠点とした石垣島調査です。石垣島を2周以上しました。それは、天気が悪く、調査地点についても雨や強風、あるいは風雨の影響で調査ができなかったからです。前回、オオシママドボタルを確認した川平湾では、ホタルを確認できませんでした。北部の平久保崎や中部の米原(ヤエヤマヤシ群落付近)などでは、いそうなのですが見つけることができませんでした。いそうというのは、幼虫の餌となるマイマイがたくさんいて、食べられたと思われる殻もたくさんあるということです。またしても不発かと思い始めました。仕方なく石垣島鍾乳洞に行きました。この鍾乳洞は石筍数が日本一で、鍾乳洞イルミネーションでも知られています。石灰岩地帯には貝類が多く、ホタルがいることも多いのです。ただ、前回の予備調査では発見できませんでした。入り口右側の植え込み下を、何気なく調べてみました。すると、オオシママドボタルの幼虫がいるではないですか。それもうじゃうじゃ!「やったー!」と大声を上げそうになるのを押さえて、採集しました。他の観光客が不審そうに見ていました。この日はやや気温が低いので、冬眠かと思いましたが、マイマイを食べようとしている幼虫もいました。これで、研究ができます。今回の成果の一つです。

 そういうわけで、今回はオオシママドボタルの存在を由布島、竹富島、小浜島、石垣島の4島で確認することができました。もしかしたら、由布島と小浜島では、世界初の発見だったかもしれないという自己満足にも浸ることができました。また、幼虫を採集したので、その斑紋分析等により、種の分化の何らかのヒントが得られるかもしれません。

 八重山諸島から戻り新学期までの間、形態や生態を調べる楽しいホタル研究をしました。その中で、1匹のオオシママドボタルの成虫が飛び立ちました。2cm近い昆虫が目の前で飛ぶのは迫力があります。羽ばたく音が聞こえるようでした。夢中でシャッターを切りました。

 そんな様子を見ながら、勉強(研究)が楽しいというのは、「興味をもっていること」だと、改めて感じました。同時に、これからも子どもたちが学習に興味がもてる工夫をたくさんしたいと思いました。そして、年度末の3月には自ら大きく羽ばたけるようにしたいと思いました。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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