2013.12.27
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

2013流行語と教育

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 2013年はどのような年だったでしょうか。
 「新語・流行語」に主な視点を当てながら、私自身の教育とその考えを振り返ってみることにします。

 「ユーキャン新語・流行語大賞」(現代用語の基礎知識選)は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」の中で、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶものです。
 2013年の年間大賞は、予備校講師・林修氏の「今でしょ!」、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』の「じぇじぇじぇ」、TBS系連続ドラマ『半沢直樹』の「倍返し」、東京五輪招致のプレゼンテーションで滝川クリステルさんが日本をPRする際に使用した「お・も・て・な・し」でしたね。1984年に創設された同賞において、史上初となる最多の4つの“ことば”が大賞に選ばれました。
 このことは何を意味しているのでしょうか。

 これは、現代社会における、一層の「価値観の多様化」と「流行の移り変わりの速さ」を象徴しているのではないかと考えています。
 当然、社会の縮図でもある教室や学校といった教育現場も影響を受けていると考えなければならないのです。つまり、年々、子ども(その背景にある家庭)の価値観は多様化するとともに、変化してきているととらえなくてはならないということです。
 教育現場で、「以前は、これでよかったのに。」「去年は、同じ方法で上手くいっていたのに。」ということが起こるのは当然なのです。ここで、考えすぎてしまうと、心身共に疲弊してしまいます。
 そこで、指導が上手くいかないことに対して悩み過ぎることなく、また、子どもや家庭のせいにすることなく過ごせるように、私が2013年に心がけてきたことを紹介します。

 宿題を忘れたり、係や掃除をさぼっていたりする子がいた時、「また、忘れたのか!」「どうしようもないな。」「何をやっているんだ!」というと、イライラしたり、雰囲気が悪くなったりします。そういう時は、とにかく大げさに「じぇじぇじぇ!」と言って驚いてあげます。続いて、「○○くんが忘れるなんて、びっくりだぁ~。」などと、あやしい方言でつぶやきます。
 そして、すかさずジョークを交えながら「いつやるか?」と突っ込むわけです。子どもは当然、「今でしょ!」とくるわけです。そこで、「さすが、分かってるねぇ。では、お願いします。」と切り返すわけです。声を出してはいけない状況でしたら、「今でしょ!」のイラストを持って、子どもの前に立ちます。子どもはそのポーズをしながら、やるべきことを始めます。教師はOKサインを出すだけで済みます。
 ところが、子どもが「後でしょ!」とふざけて言ってくる場合があります。ここで怒ってはいけません。顔は笑って、目はやや厳しく「本当は、いつやるかっ?」と聞き直すのです。十分な演技力を伴って‥。

 「やられたらやりかえす。倍返しだ!」は、非常にネガティブで破壊的な言葉ですが、子どもは喜んで使っています。低学年では実際に行動に移すような子もいました。
 そこで、『悪の倍返し』のロールプレイをやって見せます。つまり、わざとでなく体がぶつかったり、ボールが当たったりするシーンで、その何倍もぶちかえしたり、ボールをぶつけたりするのです。その結果、どういうことになったり、どういうクラスになるかを考えてもらい、それを板書します。
 次に、『善の倍返し』のロールプレイを見せます。ここでは、助けてくれたり、拾ってくれたりした人だけに親切なことをするだけでなく、他の人に親切を広げて返していく様子を見せます。そうしていくと、どういうクラスになるかを考えてもらい、それも板書します。
 『悪の倍返し』のクラスの様子と、『善の倍返し』のクラスの様子が可視化されます。これ以上は教師が語らなくても、子どもたちはどんな倍返しをすべきかが分かってきます。
 
 私自身が日頃から心がけていることは、他人から受けた親切な行為に対して、少なくともそれ以上のことは返そうとすることです。ただ、当人にはなかなか返せないこともあるので、他の人に親切にするようにしています。当人ではないので、なるべく倍返しを目ざしています。
 日常的には、子どもに対して実践しています。たとえば、ある子が好意をもって、私の仕事を手伝ってくれたとします。その子に対して、私が倍返しで面倒を見たら、ひいきになるでしょう。そこで、その子だけでなく、他の子やクラス全体に対して、ていねいに細かく手を入れようとします。特に、手のかかる子に対して、根気強く面倒を見ようとするわけです。
 また、教材研究や準備に対しても、「教える」ため=仕事のためだけと考えるのではなく、『お・も・て・な・し』の気持ちをもって行うようにしています。自分がされたら嬉しい・楽しいことを考えて、教材研究をするようにしています。ですから、教室の机の整頓や登校前の机拭きなどは、自然にできるようになりました。

 このように、2013年の新語・流行語年間大賞を勝手に解釈・活用することで、今時の教育の一つの姿ができてきました。
 2013年の「今年の漢字」は『輪』でしたが、来年はさらに広げた輪にしたいと考えています。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

同じテーマの執筆者
  • 安居 長敏

    滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長

  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 深見 智一

    北海道公立小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop