今年もまた、京都に行く機会をいただきました。去年は6月だったのですが、今年は11月になりました。それは、「教師みらいプロジェクト実行委員会」が主催する学級づくりに関する理論と実践を学び合う会に参加するためです。
こうした勉強会では、講師からの学びだけではなく、参加者からも学ぶようにしています。最近は、講師の先生の一方的な講義だけではなく、ワークショップ形式であったり、シュワリングしたりするなどして、みんなで話し合うことが多いので、交流の中から学べるようになっています。私はそれだけでなく、参加者の意欲を刺激として、自己に還元するようにしています。
さて、今年の京都セミナーですが、さしずめ「教育つれづれ日誌オールスターズ」と言ってもよい(私が勝手そう名付けました)、すばらしいメンバーが揃いました。
講師として、「豆腐のような教師になろう」の鳥取県の西村健吾先生が、学級通信を元に学校行事で子どもを育てる実践を紹介し、道徳の模擬授業を行いました。
「サムライ教師」の大阪府の松浦博孝先生は、特別支援が必要な子に対する他の児童の関わり方について実践報告をし、図工の模擬授業を行いました。
一方、参加者の中には「楽しみながら鍛えよう」の岡山県の松森靖行先生がいました。
教育つれづれ日誌の中で、教育に対する厚い思いのこもった実践を紹介する先生方です。講座で話を聞きながら、ある日のつれづれ日誌を思い起こすことで、一層、深みのある研修にすることができました。
松森先生は受講者としての参加でしたが、その立ち居振る舞いや懇親会で話をする中で、教育者として学ばせていただきました。
この京都セミナーでは、富山県と千葉県から来られた講師の方も、確固たる教育哲学と実践を紹介してくださいました。
群馬県から京都までは片道5時間近い道程ですが、それがまったく気にならないセミナーでした。すばらしい先生方との出会いと交流、そして多くの学びは、何物にも代え難いものになりました。
今年一番の充実した研修会になりました。
と、言い切ることができるのは、京都であと2人の有名人に出会えたことによります。そのお二人は故人ですが、社会科の教科書や資料集に載っている方です。
誰かと言いますと、空也上人と平清盛(の木造)です。
最近は毎年のように京都に出かけるのですが、なかなか会う機会がもつことができませんでした。今年こそはと思い、日程に組み入れました。
お二人は洛東の六波羅蜜寺(写真 左)の宝物館にいらっしゃいました。まず、本堂でお参りを済ませた後で、本堂の左手から宝物館に向かいました。その宝物館の左手奥に並んでおられました。
「空也上人立像」 鎌倉時代の運慶の四男康勝の作とされ、重要文化財となっています。胸に金鼓、左手に撞木、左手に鹿の杖をつき、膝を露わに草履をはき、念仏を称えるくちから六体の阿弥陀が現れたという伝承のままの木造彫刻です。念仏を称えている姿が、実に写実的で、声が聞こえてきそうな気がしました。
「平清盛座像」 鎌倉時代の作品で、重要文化財となっています。平家物語やドラマに描かれる清盛は、武家の頭領として傲慢であることが多く、荒々しいイメージがあります。ところが、この経巻を手にした姿は、まったく別人のように思われます。太政大臣浄海入道清盛として、平家一門の武運長久を祈願する仏者としての気品をも感じることができました。
お二人の木像を何度も見ながら、実際にはどんなことがあり、本当はどんな思いで、その時代を生きてきたのか、千二百年以上も前の時代に思いをはせていました。
さて、六波羅蜜寺は、天暦五年(951年)醍醐天皇の第二皇子光勝空也上人により開創された西国第十七番の札所です。戦火のために、何度も火災・修復されたとのことです。
以前から気になっていたことは、「六波羅蜜寺」という名前です。今回、その意味が分かりました。
それは、花山天皇の御詠歌の中に、「例え大罪を犯した者でも、六つの波羅蜜を日々実践するすることにより罪は消えていくであろう」という意味のものがあるそうです。空也上人が、それを六波羅蜜の行動として説かれたことに由来するとのことです。
その六波羅蜜とは、「布施」「持戒」「忍辱」「精進」「禅定」「智慧」です。一つ一つの意味は省略しますが、知れば知るほど深いと思いました。
こうしたことを見聞きする中で、日本の歴史のすばらしさも実感することになりました。人間として、教師として、様々な学びを積み重ねることができました。
紅葉の美しい京都(写真 中、右)での出会いと学びに感謝して、京都から群馬に戻ってきました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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