まず習得、そして活用から探求へと導く学習展開は、理想です。
しかし、実際には、習得に時間がかかりすぎて、活用や探求が中途半端なまま次の学習へ進んでしまうことがあります。
また逆に、活用や探求学習をさせようとして、習得に時間をかけずに進め、結果として理解が不十分のため、何も身に付かないような学習になってしまっているものも見かけたことがあります。
どちらも、見通しをもった単元計画を立てていないからでしょう。
さらに言えば、年間指導計画を確実にこなしていないからでしょう。
そうは言っても、学習内容が増え、学校行事等も多い中、なかなか予定通りにこなせないのも現状です。
では、どうしたらよいのでしょうか。
それは、「これまで通りのやり方を変える」ことでしょう。
それも、ちょっと変えるのではなく、大きく変えるのです。
正しくは、「考え方を大きく変える」と言った方がよいでしょう。
これまでの習得の仕方は、理解を優先させていました。
つまり、既習をもとにして新たな解法に気付かせるように、具体物やICTなどを使って教え、十分に「分かる」ことを第一に学習を進めてきました。
しかし、その教科や単元を苦手にしている子に、十分な理解をさせるのは大変です。
当然、時間もかかるでしょう。
6年算数「円の面積」を例に考えてみます。
通常の学習過程は、以下のようです。
円を正方形と見て、およその面積の検討をつける。
円に方眼マスをのせて、その数を数えて、およその面積を求める。
円の中に正十六角形をかいて、三角形の面積の十六個分として面積を求める。
最後に、円を細かく等分して並び替えて平行四辺形、または長方形と見て面積を求める。
という手順を追って学んでいき、
『円の面積=半径×半径×円周率』の公式にたどり着きます。
ここまで、かなりの労力がいります。
ましてや、算数が苦手な子や図形の認識が難しい子は、完全にギブアップ状態になります。
教師も何とか分かってもらおうと、円の面積説明器を使ったり、円を切り貼りさせる活動をさせたりと、いろいろな工夫をします。
すると、時間が足りなくなってしまうのです。
円の面積の公式を覚えさせるや否や、あわてていくつかの問題に取り組むことになります。
円や半円、四分の一の円の求積は何とかできても、いわゆる応用問題に十分な時間がかけられなくなってしまうのです。
そこで、習得を確実にし、活用・探求の時間の時間も確保するために、私は次のような授業を展開しています。
前述の「円の面積」の例で説明しましょう。
まず、「円の面積」という単元名を書いた後、『円の面積=半径×半径×円周率』という結論を板書して教えます。
もちろん、ここで教えるというのは、円の面積の公式を丸暗記的にただ覚えさせるだけです。
そして、教科書の例題にある円の面積を、公式に当てはめて求めます。
どの子もできます。
ここでの子どもの意識は、「円の面積って、そうなんだ。」です。
その程度のレベルでいいのです。
しかし、子どもの意識のに中には、これは覚えなければならない大切なことなんだという、強い意識も生まれることでしょう。
その上で、「では、どうして『円の面積は半径×半径×円周率』で求められるのでしょうか。教科書を使って勉強していきましょう。」と言って、課題をもたせて次の学習をつなげるようにしました。
これは、「算数が苦手な子にもゴールを見せておく」、「ゴールが分かったつもりにさせておく」ことにもなるのです。
つまり、安心して授業ができるということになるのです。
途中、多少のつまずきがあったとしても、ゴールが分かっているから前に進めるのです。
教科書に沿って、様々な方法で円の面積を求める過程において、公式も確認しながら学習を進めていくようにします。
毎時間、公式を言い、数値も確認していますから、円の面積の公式にたどり着く必然性も感じるようになってきます。
子どもの意識は「円の面積って、やっぱりそうなんだ。」から、「円の面積の公式は、なるほど、そういうことだったんだ。」という確信(理解)に変わってきます。
もちろん、どの子も円の公式は確実に覚えることになります。
こうしたちょっとした単元構想を見直すことで、基礎基本となる事柄を確実に習得することができるようになります。
そして、子どもの実態に応じた活用・探求問題に取り組むことができます。
何よりも、教師も子どももゆとりがもてるようになるのが、いいですね。
「習得するためには、繰り返し学習をする」ことですが、繰り返し学習をするための時間を確保するための単元構想をしなくてはなりません。
こうした学習方法は、どの子も基本を習得し、どの子も伸びる学習方法ではないかと考え、実践しているところです。
次回は、習得を確実にする理科での実践を紹介します。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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