この夏、全く異なる2つの公的研修会(主催地域の教師は原則全員参加の研修会)に参加してきました。
一つは教育事務所の指導主事が中心となり、これまでにない講演会をしたいという思いで実現したものです。
もう一つは市の校長会で講師を決めて、講義形式のものです。
どちらにも共通しているのは、全員参加と毎年行われている講演会であるということです。
まず、前者がどういうものかを説明します。
例年、夏休みに開かれている教育講演会を、使える・役に立つものにしたいという発想のもとで企画されました。
そのために、大学教授やある種の有名講師による受動的な講演会でなく、民間の教育ボランティア団体とのコラボレーションによる研修会が行われました。
「授業力向上のための講演会」と題され、基調提案・模擬授業・グループワーク・まとめの講座といった内容となりました。
2本の基調提案では、「学級づくりと授業づくりの一体化」に関する理論と実践例が紹介されました。
続く模擬授業は、その提案を受けての国語授業が2本行なわれ、参加者は児童になって読んだり書いたり発言したりしました。
グループワークでは模擬授業から学んだことをシェアし、総括の講座では現場での具体例を元にして日本人の心を伝える教育についての話がありました。
午後からの講演会でしたが、参加者は生き生きとした表情で聞き、授業に対して何らかのヒントを得たという感想をもって帰って行きました。
20~30分で切り替わるので、リズムとテンポがよく、それぞれを新鮮な感覚で受け入れることができました。
次に、後者について説明します。
こちらも例年、夏休みに開かれているもので、今年も一人の講師を呼んで、講義形式で話を聞くだけの講演会が行われました。
受付をして要項とレジメをもらいましたが、開始前からそのレジメを見た参加者は、「横文字ばかりで、日本語にならないのか」などと違和感を感じているようでした。
「創造力を生む人材育成」という演題で、ある海外企業の顧問経験のある大学名誉教授が講師でした。
講師は企業の顧問時代に、その企業を業界トップにするほどの実績をあげたそうです。
その成功要因について、人材育成の話を交えて90分の講演を行いました。
事前におよその内容を聞いていましたので、個人的には楽しみにしていました。
確かに、海外の企業に出向して、イノベーションを展開してきた実績はすばらしく、教育においても学ぶところはあると思いました。
しかし、話を聞いた多くの教師は何とも言えない表情をしていました。
つまり、「何で今、この話なんだ」と言うことです。
講師も教師に対する講演会は初めてで、「どのようなことを話していいか、役に立つことがあるのかどうか」ということを言っていました。
結局、講師の話と参加者のニーズがかみ合っていなかったのです。
居眠りをする参加者が続出した講演会に対して、主催の校長たちは、「今までにない話が聞けた」と自画自讃していました。
管理職と現場の教師の意識があまりにもすれ違っている実態も明確になりました。
しかし、この事実を誰が明らかにし、また誰が評価するのでしょうか。
多くの疑問を残して、講演会が終わりました。
この2つの研修会のことは、普段の授業にも当てはまるのではないでしょうか。
子どもの実態やニーズに合わせ、飽きさせない工夫をしながら、達成感や成就感を味わわせることで子どもを成長させていくのが、教師の仕事(授業)だと考えているからです。
子どもの気持ちや実態から遊離した一方的な授業では、聞いていればいいといった、建前や形を教えるだけになってしまい、何も身に付きません。
「人の振り見て我が振り直せ」 自分自身の授業や日常を振り返る機会にもなりました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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