残暑が厳しいと思っていたところに、大型の台風がやってきました。被害に遭われたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。また、季節の変わり目で、体調のバランスを崩す方も増えています。くれぐれもご自愛ください。
東京では台風のあと、ようやく秋めいてきました。運動会のシーズン到来です。私の勤務している学校でも、10月初旬に行われる運動会に向けて、毎日熱心に練習を行っています。
しかし、その練習の様子はここ10年の間に、少しずつ変化してきました。2002年の学習指導要領改訂の前には、時間をかけて徹底的に練習する姿がどこの学校にも見られましたが、最近は授業時数の確保のために、体育の時間数を守りながら、いかに効率よく指導するかということが重視されてきています。たとえ短時間での取り組みであっても、運動会を通して、表現運動や団体競技、徒競走などで、子どもたちの力を伸ばしていってほしいと思います。
ところで、運動会などの学校行事では、子どもたちの運動能力の向上と共に、集団としての力を伸ばすことも視野にいれなければなりません。学習指導要領には、学校行事を通して「望ましい人間関係」を作ったり、「集団への所属感や連帯感」を深めたりすることをねらいとするように書かれています。
しかし、望ましい人間関係や、集団への所属感などは、学校行事だからこそ身に付くものではありません。もちろん、集団での演技や団体競技といった大掛かりな活動は、運動会で行うからこそ気分も盛り上がり、連帯感などを培うにはとてもいい機会となるでしょう。ただ、そのチャンスを最大限に生かすために、人間関係を構築するための活動や、集団としてのまとまりを作っていくような学習に、普段から継続して取り組んでいく必要があるのです。
最近、「クラス力」という言葉を耳にしました。具体的な内容を聞いたわけではありませんが、これが、集団としての力を意味するであろうことは想像できます。みなさんは、この「クラス力」から、どのようなイメージをもたれるでしょうか。
先日、3年生の子どもたちに、「クラス力」とはどのようなことを意味すると思うのか、聞いてみました。何の説明もなしに、言葉から受けるイメージを答えてもらったのが、以下の通りです。
クラス全員が、勉強をがんばっている
みんなで勉強を教え合う
みんなで遊べる
相手の気持ちをわかろうとする
助け合う
励まし合う
協力する
仲良くする
親切にする
努力する
笑顔で過ごす
あいさつする
あきらめない
日頃から折りをみて言い聞かせているせいか、3年生にしてはいろいろな表現ができるようになってきたなと思いました。私はこれ以外にも、「けじめをつける」とか、「人の話をよく聞く」という力も入れてほしいと欲張りな考えも浮かびましたが、子どもたちが集団でいるからこそ身につけられる力に注目できたことはよかったと思います。
一人で勉強していては、教え合ったり、励まし合ったりすることはできません。同世代の集団で組織されているクラスに所属しているからこそ、いろんなかかわりが生まれ、学びが生まれるのだろうと思います。ですから、そのクラスという集団を、どのように育てていくかということを、私たち教師は、いつも考えに入れていく必要があるのです。
30~40人という数の子どもたちが、同じ教室で学んでいればクラス力が育つわけではありません。常にかかわりをもたせ、自分を上手に主張しながら、相手の気持ちを考えて行動できる術を身に付けさせていかねばならないのです。そのための授業力を、教師自身がつけていく必要があると考えます。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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