この夏、北欧4カ国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク)を巡ってきました。日本とは全く異なる自然や文化、芸術などを見聞きし、肌で学んできました。
そのうち、4日間滞在したノルウェーで、現地の観光ガイドさんから聞いたり、自分で調べたりしたことから、教育について興味深いことを報告します。
まず、ノルウェー(NORWAY)という国について説明しておきましょう。
ノルウェーという国名は「北への道」と言う意味があり、名前の示す通り、スカンジナビア半島の西部に位置し、国土が北極圏に向かって伸びています。人口は約450万人で、その多くは南部に集中し、首都オスロを中心にした地域の人口密度は高くなっています。比較的気候が温暖な海岸地帯から一歩内陸に入れば、天候の厳しい山岳地帯が広がっています。海岸線は複雑で、氷河により削られ沈降した陸地に海水が流れこんだ地形(フィヨルド)が、ダイナミックな景観を見せてくれています。入江の全長204km、最深部の水深1308m、両岸の標高1700mを越える山々が連なる世界最大最長のソグネフィヨルドは観光名所になっていて、世界自然遺産になっているフィヨルドもあります。
また、牧草地が広がる農地や、フィヨルドの谷間の隙間にある小さな村は本当に美しく、おとぎの国に来たようでした。ノルウェーは自国の農業を守る政策をとっているそうですが、美しい自然や景観を維持するには、農業を守らねばならないという姿勢も見ることができました。
フィヨルド観光の拠点となっているのが、旧首都のベルゲンです。今回は、このベルゲンに連泊しました。この辺りに住むベルゲン人は、北欧の中でもセンスがよいと言われているそうで、「素敵!」と思うようなかわいらしい家がたくさんありました。
では、教育に関して見聞きしたことを紹介しましょう。
ノルウェーでは7年間の小学校、3年間の中学校、3年間の高校又は専門学校となっていて、ここまではほとんどの子どもが教育を受けるそうです。これは中卒では、仕事がないためだそうです。また、高校の卒業試験が大学の入試となっていて、高校卒業後、しばらく旅をしたり、働いたりしてから大学に入る人が多いというのには、びっくりしました。その大学は、入試がないので入学するのは容易ですが、卒業するのは難しいとのことでした。また、大学での単位は、いくつかの大学のものを合わせて取る人が多く、30歳になっても50歳になっても大学に戻って勉強する人が多いのだそうです。興味深かったのは、教育大では社会人の経験や子育ての経験が入学のためのポイントとされることや、授業料はタダだが本代は自費で、国のローンでお金を借りて学校に通う人が多いということです。
私がノルウェーに行った7月下旬は夏休みで、小学校には児童はもちろん、先生もいませんでした。夏休みは6月10日から8月20日までの2ケ月半近くあるそうで、夏休みの宿題はなしだそうです。一方、大人の夏休みは4週間、50歳以上は5週間もあるそうで、子どもを連れて他のヨーロッパへバカンスに出かけたり、別荘やキャンピングカーで自然の中で長期休暇を過ごしたりしているそうです。
小学校のクラスの人数は28人までで、ものの覚え方や習い方・見つけ方などとともに、IT教育も進んでいるとのことでした。
また、教育での大きな違いは、日本ではできないことをよく問題にしますが、北欧の国々ではできることを見つけて、それを伸ばしたり実現しようとする所が強いことではないかと感じました。日本でも、少しずつよさを伸ばす方向に向かっているとは思いますが、北欧では当たり前だということを知りました。
ところで、18歳になると男子は1年の兵役があります。女子も国から呼ばれれば兵役があるそうです。兵役は理由があれば延ばすことができますが、拒否はできません。どうしても受けたくない人は、1年間以上の福祉のボランティアを行うとのことでした。
ノルウェーは福祉国家としても知られていますが、その基盤には『18歳の自立』とそれを支える教育制度があります。まず、大学まで授業料は無料で、義務教育の間は教科書からノート類まで一切の費用がかからないのです。子どもたちは地域の公立学校に通い、少人数教育で手芸や工作など生活技術を身に付け、一人ひとりの個性を大事にされて「自信」(=生きる力)をつけていきます。18歳で高校を卒業して「成人」すると親の家を離れるのが一般的で、親は子どもの人生に口を出さないし、お金も出さないそうです。社会に出てから大学に行きたくなれば、本人が国の教育ローンを借りて生活費に充て自分で働いて返しています。
興味深いのは、前述しましたが、高校を出てすぐ大学へという日本と違い、高校を出て一年間は自分の進路を見極めるため遊んだり、好きなことをしたり、外国を旅したりしながら、これから自分がやりたいことを探すことです。それを自分で決めてから、大学へ進んだり、仕事に入ったり、目的を持って先に進むのだそうです。
このように子どもの教育にお金はかからないし、『18歳』という目標があるので、それまでに、料理や庭の手入れ、家の修理などの技能を身に付けて自立できるように、父親も母親も一所懸命に子どもと関わっているそうです。「一日当たりの労働時間」が7.5時間と短い上に、残業もないので、夕食を家族そろって食べるなど、そのための条件もあるようです。人間的な豊かさとは、こうした中に存在するのではないかと思いました。
もちろん、日本の伝統や教育のよさもたくさんあります。しかし、すべてがグローバル化する今日、日本の教育の中に取り入れられるものや考え方があったら取り入れて、これからの日本人を育てたいと強く思いました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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