2013.07.31
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若い先生たちへのメッセージNO.7「学力を高めるための秘訣」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

 夏休みが始まりました。事務処理や研修の多い時期ですが、普段の授業を続ける日々とは異なり、多少は余裕をもって仕事をこなすことができるのではないでしょうか。
 

 さて、一学期を振り返ってみたいと思います。私自身、今春異動して、3年生の担任をしてきました。そのため、若い先生たちと同様か、それ以上の苦労をしてきたように思います。他の学校での経験があったとしても、新しい学校に慣れ、違ったやり方で仕事をこなせるようになるには、時間も労力も必要です。また、新しい同僚との人間関係を築くばかりではなく、子どもたちとの関係、あるいは保護者との関係を作っていくにも時間がかかります。

 よく、ベテランなのだから何でもできると誤解されますが、決してそのようなことはありません。むしろ、ベテランと見られるだけに周囲の期待が大きく、それに応えようとして、自分自身も無理をしてしまいがちです。関係を築くには時間がかかるものであり、それはベテランでも若手でも同様であるといった、余裕のあるまなざしが職場には必要ではないかと感じます。

 

 ところで、環境に慣れるのには時間がかかっても、授業を行ったり指導をしたりという側面においては、待ったなしです。そういった仕事には、経験がものをいいます。人間関係を築きながら、一方で子どもたちが学力を着実に身につけることができるように努めてきました。その経験から、若い先生たちに学力向上の秘訣をお伝えしたいと思います。

 授業をするにあたって最も大事なことは、子どもたちがおしゃべりをしている間は、教師が大事な話を始めないということです。ヒソヒソ声であったとしても、認めてはいけません。授業中のけじめを、きっちりとつけさせていく必要があります。

 これは、子どもたちが教師の話を聞き逃すと、勉強ができなくなるといった単純な理由からだけではありません。もちろん、聞き逃すことによって、学習内容がわかりにくくなってしまうということもあるでしょう。しかし、最も大きな問題となるのは、授業中にけじめなく話をするという癖がついてしまうことです。また、教師の話を軽んじていても、学習は補いがつくという錯覚を育ててしまいます。

 ですから、授業中に教師が話をするときには、静かに聞くという姿勢をつくるところから始めなければなりません。だらっとした姿勢であっても、話を聞いていればいいということでは困るのです。話を聞くからには姿勢を正して、手いたずらをやめて、耳を傾けることを習慣付けていくことが大切です。

 それから、そういった姿勢をとらせるために、タイマーの音や黒板にカードを張って合図をする方法をとることがあります。これは、よほどの必要性がない限り、用いない方がいいでしょう。子どもたちは、教師の話そうとする姿勢を感じ取ったり、場の空気を読んだりすることをやめ、合図を頼りに生活することになってしまうからです。自分で判断するのではなく、指示に従って動くようになってしまうことを懸念します。

 

 このように聞く姿勢をとらせることができるようになったら、次は教師の話し方を工夫しましょう。ひとつには、リズム感のある、楽しい話や興味をもちやすい話をしていく必要があります。それから、内容がわかる話です。話を聞いて、それが子どもたちにイメージできるものにしていきましょう。イメージを補うために、絵や写真を用いることも大切です。

 「聞く力」を育てることが、学力向上には欠かせません。聞く姿勢を育てる一方で、教師自身の話す力を伸ばすことができるように、研鑽を重ねていきたいものです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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