一学期もようやく終わりに近づきました。4月からの3ヶ月、若い先生たちにとっても苦労の多い毎日だったのではないでしょうか。私はこの4月に異動したので、学校に慣れることに精一杯で、あっという間に月日が経ってしまったという感じがします。
ところで、三学期制をとっている学校では、終業式に通知表を渡します。そろそろ完成の時期ですね。この通知表について、豆知識をご紹介します。
私の子どものころは、「国語 A」とか、「算数 4」というように、教科ごとに3~5段階で評価されていました。この方法を相対評価と呼びます。クラスの中で、おおむね10%にAとつけましょうといった取り決めがなされていて、その割合に沿って評価していくのです。クラスの多くの子どもたちが100点を取っている場合であっても、その割合で評価するというのは、いかがなものかと考えたこともありました。
その後、「単元別評価」というものができました。これは、算数を、「たし算のくりあがりができる」「円や四角形がわかる」というように、単元ごとに評価していくものです。その評価のころから、絶対評価という方法が取られるようになり、テストなどで高得点を取り、その単元の学習が十分に理解されていると評価された場合には、人数に関係なくAをつけることができるようになりました。
そして今から10年ほど前に、「観点別評価」が導入されました。「たし算」とか「面積」というような単元ではなく。算数の授業全体を通して、関心や意欲はどうであったか、数学的な考え方ができたのかどうか、計算のやり方は正確であったのかどうか、知識は定着しているのかどうかといった観点から評価するのです。現在は、多くの学校がこのような観点に沿って評価しています。
評価の方法がたくさん出てきてしまったので、ちょっと整理してみましょう。
相対評価は、クラスの中の順位を表すような評価で、絶対評価は個人のがんばりそのものを評価します。この相対評価と、絶対評価は対局にあります。
それらを横軸に置くとすると、縦軸にあたるのが、単元別評価とか観点別評価になります。単元や観点ごとに相対評価を行うのか、絶対評価を行うのかといった具合に横軸と縦軸を組み合わせて評価する必要があるのです。
現在は、観点別に絶対評価を用いて、子ども一人一人のがんばり度を評価しています。では、どうやってがんばりを見ていくのかが問題になります。たとえば、担任の頭の中で、「この子どもは、よくがんばっている」と評価したのでは、担任の個性や資質に偏ってしまい、他のクラスと同様な評価ができているとは言えません。
そこで、到達度を見ていこうとする考え方が採用されました。例えば、体育の鉄棒で逆上がりをさせたとします。「逆上がりができる」を「できる」とし、「とても美しいフォームで回転し、着地の際には足をそろえてできる」を「よくできる」、「補助版を使ってできる」を「もう少し」というように、規準を決めていくのです。
すべての教科、すべての単元において、こういった規準が決められています。学校ごとに規準表が設けられていて、それに沿って評価をしていくのですから、とても大変なことです。
小・中学校においては、これらの評価を日常的に行っていかなければなりません。それには、メモを取ることが効果的です。単に「A」という評価を残すよりも、「A; 逆上がりの後、空中逆上がりをしてきれいに降りた」と記録しておけば、より信用性の高い評価を行っていくことができます。
もちろん、毎時間の授業中にできることには限界があります。その時間内に難しい場合でも、あとでメモを取っておけば、子どもの変化を記録として残していくことができるのです。これは、評価するということに加えて、次の指導に生かしていくこともできます。一石二鳥の仕事です。
さらに、このようなメモは、所見を書くときにも大きな助けになります。一学期の間に、子どもたちは多くのがんばりを見せてくれました。そのすべてを記録として残していくのはできないにしても、より多くのことがらを、家庭に伝えていきたいと思います。それによって、二学期の学校生活への意欲付けになってくれることを、願うからです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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