今年のゲンジボタルのシーズンが終わろうとしています。
ゲンジボタルは、日本ではよく知られているホタルですが、簡単に紹介しておきます。
ホタルという昆虫は、日本には50種類ほどいます。そのうち、幼虫時代は水中で過ごし、成虫になると陸上で生活する水生昆虫と呼ばれる仲間に属するのが、ゲンジボタルなのです。ホタルの中で、ゲンジボタルと同様な水生昆虫は、他にヘイケボタルとクメジマボタルだけなのです。世界中に2000種類ほどいるホタルの中でも、水生のホタルは極少数なのです。ホタルのスタンダードは、一生、陸上で生活する陸生ホタルなのです。
また、ホタルに対して、懐かしいとかうれしいとか特別な思いをもつのは、日本人だけなのです。これには、日本人とホタルの深いつながりがあるからなのです。
さて、私は毎年、ゲンジボタルを中心にホタルの調査をしています。そこでは、次のような風景を見かけることがあります。
ホタルを見に来た親子がいます。
飛んでいるホタルを追っかけていた子どもが、お父さんに言いました。
「ホタル、取って。お家に持って帰りたい。」
お父さんは
「今、取ってやるぞ。持って帰って、みんなに見せてやろう。」
と言いました。
そして、一匹ではなく何匹も取り、隠すように虫かごに入れて持ち帰りました。
一方、こちらにも小さい子どもの手を引いて、ホタルを見に来た親子がいます。
初めてホタルを見た子どもは、
「ホタル、きれい。ほしい、ほしい。」
と言って、ホタルを欲しがりました。
そこで、お母さんは何と言ったでしょうか。
「ホタルさんって、きれいでしょう。ホタルさんがきれいに光って見えるのは、こういう 自然の中で光っているからなのよ。」
それでもなお、ホタルを欲しがる子どもに、お母さんはこう言いました。
「ホタルさんにも、お父さんやお母さんやお友だちがここにいるのよ。あなたが連れて行かれちゃったら、どう?うれしい?」
小さい子どもは、頭を大きく左右に振りました。
しばらくすると、その小さい子どもの体に、ホタルが飛んで来て止まりました。小さい子どもは、そのホタルの様子を見てから、振り返ってお母さんに言いました。
「ホタルさんは、みんなといた方がいいんだよね。」
お母さんは、優しい笑顔でうなづきました。
このようなやりとりは、ホタル発生地ではよく見られます。
みなさんは、こうした事実をどう考えますか。
そして、このような環境の中にある子どもは、どういう子どもに育つと考えますか。
さて、ホタル(ゲンジボタル)の光は、見る人に感動とともに、癒しを与えてくれます。これは、ホタルの光のゆらぎ(飛翔しながらの明滅発光)が、人の脳にα波を発生させるからだと言われています。もちろん、ホタルが住んでいる環境が水辺であることから、マイナスイオンが多く、フィトンチッドが豊富であることとの相乗効果もあるでしょう。
教育現場(教室)でも、気持ちのよい環境を創り、子どもが納得する教育が展開できたらよいと思っています。(これが、今年度の私の自主研修のテーマです)
ホタルの発生は、南から北へ北上していきます。ゲンジボタルのホタル前線は、青森県が終点です。ゲンジボタルは、津軽海峡が越えられなかったからです。
7月でも東北地方の北部や本州の高地では、ゲンジボタルの光を見ることができます。もちろん、水田などではヘイケボタルのかわいい光を見ることもできるでしょう。そして、山中で人知れず光る陸生ホタルの成虫や幼虫たちも、気をつけて見ると、どこでも見ることができるはずです。
そうしたホタルの癒しの光の中で、教育を考えることは、教師にとっても人間にとっても大切ではないかと思っています。
私はまた、ホタルのような光を子どもたちに放つ存在になりたいと思っています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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