2013.06.28
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

英語の教材

駿台学園高等学校 英語科教員 神戸 崇寛

教材を選ぶときに気をつけていることはありますか。
今、勤務校にはたくさんの新課程用の教科書、副教材が届いています。教科書などを選ぶときの基準として、教員・生徒にとって使いやすいこと、内容が面白いこと、デザインがよいもの、など様々な条件があると思います。

本年度より高校では新カリキュラムが始まり教科書が新しくなりました。
実際に新しい教科書を使ってみて気になったことがいくつかあったので、今回は教材を選ぶときに意外と忘れがちなことについて述べたいと思います。

私が教材を選ぶ場合、まず注目するのが英語として適切かどうかです。
特に以下の項目に必ず目を通します。

(1)未来表現
(2)受け身
(3)分詞構文

教材の作り手の英語力が最も試されるのが、未来をあらわす表現ではないでしょうか。
最近は減ってきたと感じていましたが、新課程の教科書でも、いまだに未来をあらわす表現willとbe going toを同一のものととらえ、機械的な書き換えをさせるものがあります。

そもそも、英語には現在形や過去形のように動詞の形を変えて未来のことをあらわす「未来時制」はないのだから、現在時制や過去時制と同じような意味で未来時制という名称を使っているのは問題です。
予定を述べる表現は日常的に使うものなので、さまざまある未来をあらわす表現(進行形、現在形など)に関する説明がもう少し詳しくあってもいいのではと思います。

受け身の文章にも同じことが言えます。
同じ状況を説明するのにどの視点から(する側か、される側か)物事をとらえるかによって能動文と受け身文を使い分ける必要があります。
この点を理解せず、能動文を受け身文に書き換えなさいという問題が載っている教科書を使っている生徒は、能動文と受け身文は同じ意味をあらわすという間違った認識を持ってしまうはずです。
ある出来事を説明するための表現方法は、何を中心に伝えたいかによって変わるということを伝えるのに絶好の機会だと私は思います。

分詞構文の良さは簡潔に情報を伝えるところにあります。
それを接続詞を使って、主語と動詞を含む文に書き換えなさい、接続詞を含む文章を分詞構文に書き換えなさい、とする問題は、分詞構文本来の働きを理解していないようにも見えます。
そもそも、一文を示しただけで、「理由」をあらわす文なのか「時」をあらわす文なのか判断するのは困難です。
文脈が変わればいくらでも意味が変わるわけだから、このような問題を解くことで、英語ができるようになるのでしょうか。

要するに、言葉は文脈があって初めて意味をなすものなのだから、一文だけを示して文法事項を説明していくような教科書では、どのような場面で、どの表現を使っていくのか理解しづらいはずです。
最近の洋書はその多くが、ある文法事項が短い文章の中でどのようにして使われているのか示していますので、どのように説明し、理解させていくのか大いに参考になる部分があります。

自戒を込めて言えば、使いやすさや題材の良さだけでなく、英語として適切な教材で授業を行っていきたいものです。

神戸 崇寛(こうべ たかひろ)

駿台学園高等学校 英語科教員
英語の文法に興味があり、大学院で研究してきました。2011年より現勤務校。日々英語を教えながら学び感じ取ったことをお伝えし、 皆さんと共有していきたいと思っています。

同じテーマの執筆者

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop