2013.05.30
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「理科、はじめて物語」 ~その後~

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

野外観察の様子 「とじこみか」前 「とじこみか」後

 小学校中学年の理科では、動物や植物の観察・スケッチをして、その成長の過程やきまりを見つける学習が多くあります。

 3年生の1学期の単元では、植物の種をまいて育て、花が咲く様子と体のつくりを観察していきます。また、昆虫を卵から成虫に育て、成虫の体のつくりを観察することになっています。
 こうした活動は、観察すると同時にスケッチを繰り返します。ここに、理科好きを持続させたり、理科の力を付けたりする大きなポイントがあるのです。

 これまで、3年生の担任をして観察・スケッチを繰り返していると、次のような子どもがいることに気づきました。

・元々、昆虫などが好きで、理科に強い興味を持っていて、いろいろな発見をすることができるが、スケッチがほとんどできなかったり、できたとしても雑だったりする子
・スケッチの対象物を知っているつもりになって、観察しないで(ほとんど見ないで)スケッチする子
・理科が好きだったのに、観察・スケッチの仕方について注意ばかりされるため、理科への興味がだんだんなくなっていく子

 そこで、今年度、3年生の理科の授業開き「理科とは何か」に続く授業を、次のようにしてみました。

 まず、自然を調べていくためには、調べる物を詳しく調べ、記録し、話し合うことだと話しました。そして、理科では調べるための「道具」の使い方を覚えて、正しく使っていくことが大切だと話しました。
 次に、観察のための道具として虫めがねを紹介し、使い方と注意をしました。もちろん、観察の視点(色、形、大きさ、におい、手ざわりなど)も教えました。その上で、観察カード(記録用紙)を持って「春の自然」の観察スケッチに行きました。
 すると、どうなったでしょうか。
 子どもたちの気持ちは、「見たい、見たい、見たい」「探したい、探したい、探したい」です。その高揚感にストップをかけるのは困難です。ですから、「うろうろしていないで、さっさと見つけた物を虫めがねでよく見てかく!」なんて言ってもだめですね。(以前の私はよく言っていました。)
 今回は、授業終了5分前に「はい、時間になりましたから、観察カードを出してください。」と言っただけでした。

 果たして提出された観察カードは、どうだったでしょうか。
 何人かの絵の上手な子は、まあまあのスケッチができていました。ところが、多くの子どもたちはというと・・想像でかいたようなアリの絵や一筆書きのような一輪の花、消し後しかないものなどです。
 最初だから、興味は持てたのだから、と言ってこれでよいのでしょうか。

 私は次の時間に、主に観察の姿勢に視点を当てた「観察の仕方」を教えることにしました。もちろん、パワーポイントを使ってプレゼンしながらです。

「前の理科の時間は、『理科の観察』になっていませんでした。それは、『理科の観察の仕方』を教えていなかったからです。今日はまず、観察の仕方を教えます。」
 子どもたちは観察をして観察カードをかいたつもりになっていましたから、ちょっとびっくりしながら教師の方を見ています。
「観察は『とじこみか』で、するのです。では、『観察はとじこみか』と言ってみましょう。」
と言って、何回か復唱させました。子どもたちはよく分からないという顔をしながらも、楽しそうに言っていました。
「元気に言えましたね。実は、『とじこみか』とは、『とまって』『じっと』『こまかく』『みて』『かく』の最初の文字なのです。」
「そうだったんだぁ。」
という声とともに、笑顔がいっぱいになりました。

 続いて、アサガオの写真を映しました。たくさん花の咲いている写真を見ながら、
「虫めがねを使う観察では、こうした全体をかいてはいけません。」
と言って、次にアサガオの花が2輪映っている写真を見せました。
「これは、いいでしょうか。」
と聞くと、全員がいいと答えました。
「これもだめです。これも虫めがねを使わなくてもかけるからです。虫めがねを使った『とじこみか』というのは、こういうところを絵と文でかくのです。」
と言って、アサガオの花の中心を映した写真を何枚か見せました。
 子どもたちは大きくうなづき、納得したような表情を見せました。
「では、これから『とじこみか』の観察に行きましょう。」
 子どもたちは元気に返事をして、『とじこみか』の観察に出かけました(写真 左)。

 3年生の子どもたちが書いた観察カードは、1回目と2回目が比較できるようにして貼り出しました。誰が見ても違いが分かります(写真 中=1回目、写真 右=2回目)。4年生以上の児童にも見せて、それ以上の『とじこみか観察』をするように言っています。
 よいお手本ができたと思っています。

 子どもも教師も、これで観察の時間が楽しみになりました。

 以上が「理科、はじめて物語」のその後でした。 

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

同じテーマの執筆者
  • 安居 長敏

    滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長

  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop