2013.05.20
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若い先生たちへのメッセージNO.3「緊張感や不安感をよみとろう!」

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

  ゴールデンウィークは、のんびりと過ごすことができたでしょうか? 新学期の疲れが、少しでもとれていればいいですね。

さて、新学期からひと月も経つと、本来の子どもたちの様子がよく見えてくるようになってきます。ちょっと背伸びをして、担任にほめてほしいと思っていた子どもたちも、疲れればわがままを言いたくなるし、興味や関心のもてない話には集中力が途絶えがちになってくるものです。そんなときこそ、底力の見せどころです。正しいと思うことを貫き、どんなときにも愛情をもって接していけば、落ち着いた生活が持続できるようになります。信念がぶれないようにがんばっていきましょう。

 そうは言っても、最初のうちは簡単ではないこともあるでしょう。私も若いころには、たくさんの苦労がありました。以前、不登校の子どもたちとかかわったときのことです。彼らは、私の心を逆なでし、自分勝手な行動ばかりしているように見えたのです。

 思い余って、知り合いの大学の先生にご相談したところ、アドバイスをいただきました。

「子どもたちが集中できないのは、不安感が高いからですよ」

 正直言って、その言葉にとても驚きました。わがままにしか見えない行動が、不安感からきているなんて、到底考えられませんでした。頭では「不安感が高いからなのだろう」と共感しようとするものの、子どもたちの気持ちを理解していたとは言い切れません。今思い返すと、もっと心に寄り添ってやれればよかったのにと、反省するばかりです。このような経験を持ち出すまでもなく、子どもたちとのかかわり方は、経験によって培われることが多いので、若いころには試行錯誤や苦労が絶えないものなのです。

 

 最近になって、子どもたちの身勝手のように思われる行動が、実は不安感や緊張感の高さからもたらされていることが、わかるようになってきました。例えば、教師が質問をすると、手も挙げずに出し抜けに答えてしまう子どもを見かけることがあります。その原因を、発達の偏りとして考えることが一般的になってきました。しかし、不安感や緊張感の高さから、思わず言葉を発しているのではないかと考えることも大切です。「待つ」ことは、心に十分な余裕があるからできる行動なのです。

 手を挙げて答えることができれば、その考えは教師にも友達にも好感をもって受け入れられます。このことを繰り返し本人に伝えることによって、よい習慣を身に付けることができるようになっていきます。それと平行して、不安感や緊張感の原因を探り、解決に向けて手を貸してやることも必要です。子どもたちが安心し、リラックスして生活することができるようになれば、大きな成果を上げることができるようになるものです。

 

 これからの時期、保護者との面談が計画されている学校も多いと思います。保護者との出会いを大事にして、保護者の方にも安心感をもっていただき、その安心感が子どもたちにも反映されていくように心がけていきましょう。

 

 子どもたちの不安感や緊張感を和らげるための秘訣をご紹介します。教師は、子どもたちとの関係を作ろうとするあまり、自分と子どもの一対一の関係ばかりに目がいってしまうことがあります。でも、最も大事にしなければならないのは、子どもと子どもの関係をいかに構築していくかなのです。縦のラインばかりではなく、横のラインにも目を向けなければなりません。子ども同士が、かかわりをもつことができる時間を、授業の中に意図的に取り入れていきましょう。

 低学年であれば、音楽の授業や朝の短い時間を使って、手遊びをさせることができます。「せっせっせ」や「なべなべそっこぬけ」など、相手を交代しながら歌って遊ぶことは、子どもたちの緊張を解きほぐすのに効果的です。

 中学年より大きい子どもたちの集団では、話し合い活動をたくさん盛り込むようにしていきましょう。私は、体育の時間に、作戦会議を頻繁に行わせています。力を合わせるというはっきりした目標のあるときには、子どもたちが積極的にかかわり合おうとするからです。体育館や校庭の片隅で、頭を寄せ合って話し合う子どもたちの姿を眺めていると、自分も楽しくなってきます。

 身体を動かし、歌を歌い、話し合ったり協力したりすることを通して、子どもたちの不安感や緊張感がほぐれていきます。そして、学校生活が、より楽しいものになっていくのです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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