2013.04.24
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荒れを感じる教育現場

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 最近、身近な教育現場で大きな荒れを感じています。いわゆる小1プロブレムの再来と拡散といった感じのものです。

 小1プロブレムとは、小学校に入学したばかりの児童が、授業中に座っていられなかったり、集団行動がとれなかったりといった状態が続くことです。10年以上も前から問題として取り上げられているものです。その要因の一つとして、それまで「遊び」中心の生活が「学び」に変わるギャップがあげられていました。そこで、幼小連携などの対策が進み、改善の方向が見えて落ち着いたかのように思っていました。

 ところが、再び、小1プロブレムの大きな波を感じ、それは上の学年に拡散しているようにも思えるのです。この大きな波の原因は、親子関係の問題と発達障害のある児童の増加、特別支援教育の変化などにあるのではないかと考えています。
 特に顕著と思われるのが、親子関係に基づくものです。現在の子どもたちは、親と友だちのような関係であることが多く、先生とも友だちのような関係であることが当たり前のように思っています。したがって、目上の人に対する尊敬や敬う心が育ちにくい環境であるため、親や先生の言うことを聞かない子どもたちが増えてきているようです。また、親の過保護・過干渉によるわがままであったり、何もできなかったりするモンスターチルドレンの出現も大きな問題です。
 このように、今回の小1プロブレムの大きな波は、複合的な要因に基づいていると考えています。

 しかし、今、私が感じている身近な教育現場の大きな荒れは、子どもや家庭の問題を主因とするだけではないと考えています。教師や学校にも、大きな問題があると考えているのです。
 教師や学校の問題として、次のようなことが挙げられます。

1 各種のアンケートや集計、校務分掌の増加による書類作成などの雑務に忙殺
2 学力偏重による学力テスト増加と点数を上げるためだけの施策の強要
3 教育委員会の点数の競い合いを現場に丸投げしている現状
4 現場は研究(点数を取る)ための研究をせざるをえない現状
5 雑務が増える一方で、給料が下がることで、教師のモチベーションの低下
6 難しい子どもと保護者の増加による、教師の心身の疲弊
7 マスコミ等の体罰問題の煽りで、教師の萎縮
8 学ばない教師と学べない教師の増加
9 体面や形ばかり気にして、最大公約数的な教育しかできなくなっている現場
10 免許更新制に代表される建前主義の横行

 ざっと考えるだけでも、これだけあります。ということは、荒れを感じないわけがないと言ってもいいでしょう。

 新年度が始まったばかりなのに暗い話題を提起してしまいましたが、避けてばかりはいられないと思っています。大きな難題ではありますが、正面から受け止めた上で、何らかの対応をしていく必要があると考えています。

 そこで、私は子どもを取り巻く環境の変化に対応するとともに、子どもを育てるという視点を強くもって、保護者と「一緒に子育てをする」という感覚をもつようにして、それをなるべく発信するようにしています。
 しかし、超多忙な学校・教師に対して、学校任せ・教師任せはもう限界であることも、間違いありません。教育をもっと大きなレベルで考えるべきで、日本の教育の現状と未来像の具体を政府が示し、リーダシップをとらなければならない時期がきているのではないかとも考えています。

 では、具体的に何をしていったらよいのでしょうか。
 まず、「おかしいことはおかしい」「ならぬものはならぬ」と声を上げることではないでしょうか。「何でもいい」「何でもあり」は、法治国家としてあり得ないことです。何らかの法的根拠ができるとよいと思っています。
 次に、そうしたことを子どもに教えられるように、教師や親が子どもと一緒にいる時間を増やすことです。教師も親も、その有り様も含めて教えるのです。それはまた、日本のよき文化の継承にもつながるからです。
 特に教師は、子どもとともに親に対しても「教育者」として、己の教育哲学をもつとともに、自己研鑽に努めなければならないでしょう。

 ところで、教育現場が再び荒れ始めた今、学校から姿を消したある種の先生方がいます。どういう先生方か、分かりますか?
 それは、「ちょっとおっかない感じのお母さん先生」の存在です。かつては、どこの小学校にもいて、特に低学年を厳しく躾けていた先生のことです。そのおかげで、子どもたちは学校での集団生活と学習の仕方を学ぶことができました。また、中高学年の教師も、安心して学習指導を中心した学級経営をすることができたのです。
 このお母さん先生が定年退職してしまい、躾がうまくできない若い教師や男性教師が難しい立場に立たされているのが現状です。

 小1プロブレムが拡散することにより、小2プロブレムを引き起こし、中学年での学級崩壊の増加、高学年でのいじめの多発と人間関係の悪化など、学力問題以前の問題が山積しているようにも思います。

 こうした非常に厳しい環境ではありますが、私はできることをしていきたいと考えています。次の座右の銘を肝に据えて。
 『地球規模で考え、足元から行動する。』

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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