東京都では、団塊の世代の大量退職によって、若手教師が急増しています。
ある学校では、10年ほど前の教師の平均年齢が50歳を超えていたのに、今や30歳前半の教師ばかりになってしまったという話を聞きました。この例は決して特別なことではありません。東京都の例は顕著ですが、他の道府県でも同様の現象が起きています。
中核になるべき働き盛り世代はごく少数であるにもかかわらず、学校が成り立っていることの裏には、若手教師が必死で仕事をこなしているという実態があります。なんとか実務をこなしているものの、教師の仕事は数年間で身につくものではありません。私は10年以上経ってから、やっと一人前になったと感じた瞬間がありました。それからさらに10年あまりが過ぎた今でも、学ぶことの多さに圧倒されています。数少ない私たちの世代が、より多くのことを後輩に伝えていくことが急務になっていると感じます。
そこで、この場をお借りして、若い先生たちに役立つ内容をお伝えしていこうと考えています。新規採用の先生方のみならず、教師の仕事に慣れてきた先生方も、参考にしていただければ幸いです。また、保護者のみなさま、地域のみなさまにも読んでほしいと願っています。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、新年度が始まって二週間。教師のみなさんは、きっと多忙な毎日をお過ごしのことと思います。新しい職場で緊張の日々を送っていらっしゃる方も多いでしょうし、子どもたちとの出会いに戸惑っていらっしゃる方もいるでしょう。
教師が子どもたちと出会ってしばらくは、一人一人の個性を把握しきれないので、とても疲れるものです。それは、ベテランであろうが若手であろうが同様です。自分だけが苦労しているのではないかと、悲観してはいけません。教師と子どもたちとの信頼関係を築くには、ある程度の時間を必要とします。夏休み前にクラスがまとまってくればいいというくらいの気持ちで、過ごしていきましょう。
それから、教師が疲れているということは、子どもたちも疲れているということに気付かなければなりません。緊張や不安を、大人のように口にしないだけです。新しい担任に慣れようと健気にがんばっているので、家に帰ると不機嫌であったり、早く寝てしまったりということがあると思います。そういう子どもたちのがんばりを、家庭が支えてくれていることにも気づいてほしいと思います。
疲れを軽減するために、子どもたちとの毎日に、リラックスできる時間を意図的に作っていきましょう。ひとつの特効薬は、みんなで大笑いできるような遊びを取り入れることです。簡単なゲームを5分間くらい行うだけでも、子どもたちの緊張はほぐれてきます。
また、大声を出すような時間を作ってみましょう。例えば、体育の授業の終わりに、リレーごっこを入れてみましょう。友達を応援するときには、必然的に大声を出すことになるので効果があります。体育館や校庭であれば、大声も迷惑にはなりません。
笑ったり、大声を出したりすると、心が解放され、学校は楽しいという印象を植え付けやすくなります。楽しいと思うことができれば、疲れも吹っ飛んでいきます。
すべての子どもたちが、元気に「おはよう」と登校してきてくれるような学校にしていきたいと思います。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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