2013.03.01
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

続・卒業式にはこんな通信を!

米子市立福米東小学校 教諭 西村 健吾

  

 

 別れがあるから,この人生は美しく,出会いがあるから,この人生は素晴らしい。

 

 いよいよ3月です。別れの季節の到来です…。

 

 私事で大変恐縮ですが,1年半綴ってまいりましたこの「教育つれづれ日誌」。ひとまず,この3月をもって,一端レギュラー執筆者からは退く決心をいたしました。  

 「教育つれづれ日誌」の執筆陣に加えていただいて1年半…,

*教師生活17年。自分が教師であることの証を,何かしらの形で残していきたいと思ったこと。

*誠に僭越ながら,自分の中で,ほんの少しだけ蓄積のあった学級通信の実践を世に問いたいと思ったこと。

 

 それら当初抱いていた目的が,ある一定程度達成でき,おかげさまで,全国の先生方に共感及び応援までしていただけるようになりました。あるときは,このような拙記事に対して,全国の見知らぬ先生方からありがたいメッセージを頂戴したこともありました。また,セミナー等でお会いした際,「西村先生,つれづれ,拝読しています。いつも応援していますよ。」などとお声をかけていただいたこともありました。本当に,ありがたく,涙があふれそうになりました。

 

 本稿を合わせてあと2回…。熱い思いをもって,筆を執りたいと思います。

 

3-3.節目にはこんな通信を(卒業式編)

 さて,昨年の同時期にも,卒業式に子ども達及び保護者に宛てた学級通信文例をご紹介しました。

 「卒業式にはこんな通信を!」(2012年3月12日公開分) 

 「オンリーワン」をキーワードに,子ども達に教室で読み上げる原稿を兼ねた通信例でした。

 今回は,それとは打って変わり,卒業を前にした子ども達に,教師自身の生き様を語ることを通して,今まさに学舎を巣立っていこうとする子ども達へ最後の激励を…という内容です。

 誠に気恥ずかしく,故に3人称で語らざるを得なかった拙い文章ですが,どうぞ,ご覧ください…。 

 

実例27.手紙 

 

 彼は,小さい頃より決して器用ではありませんでした。

 何をするのにも人の倍時間がかかる上に,変にこだわってしまう分余計に時間がかかる…。

 彼は,小さい頃より,決して勉強ができる方ではありませんでした。

 家で勉強をするのにも時間ばかりかかり,やってもやっても全く結果に結びつかない…。

 通知表には,得意な体育以外はいつもBやCのオンパレード…。

 彼は,小さい頃より決して人間関係を構築するのが上手ではありませんでした。

 相手のことを思いやることなく,それでいて格好つけて正義の剣を振りかざすことだけは一人前…。

 小学校では好き放題でわんぱくした挙げ句,中学校では逆に人間関係に悩み,苦しむ日々…。

 

 

 そんな彼は,中学生の時に,人生を方向付ける熱血漢(恩師)と出会い,教師の道を志します。

 

 

 そして,月日は流れ,22才の春。

 器用でもなく,決して才能があるわけでもない彼は,

 倍率20倍の教員採用試験に合格するために,猛勉強を始めました。

 理解するのに人の10倍時間がかかるなら,人の10倍努力すればよしと…。

 当時,講師であった彼は,帰宅後,午後11時までは学校の仕事をし,その後午前3時まで採用試験勉強…。

 心の弱さに負けそうになる自分に何度も打ち勝たなければならない日々…。

 

 教師になることへの夢を実現させるためには何だってしました。

 中古のスタンドピアノを購入し,我流で練習を重ね,

 書字力を向上させるために,ノート10冊にわたって教科書の教材文をひたすら写す写経のような日々。

 スケッチブックを買ってデザイン画の練習を重ね,NHKのラジオ体操をビデオに撮って家で練習…。

 習得するのに人の10倍努力を要するなら,人の10倍努力をすればよしと…。

 人生の中で最も苦しい,人生を決定づける今こそ,息つく間もないくらい必死でがんばらねばと…。

 そんな日々が4年…。

 

 

 そして,26才の春。志を抱いてから12年。彼はついに教師になる夢を叶えることができました。

 

 

 平成22年3月19日。

 教師になって10年の歳月を経た彼は,

 明日,伯仙小学校第38回卒業証書授与式において,君達の名前を呼びます。

 

 

 6年1組38名のみなさん。

 君達とともに歩んだこの2年間,

 先生の人生にとって,本当にかけがえのない2年間,

 こんな先生だから,

 自分の生き方を伝えることでしか,みなさんを導いてあげることができませんでした。

 「自分に勝つ」,「苦しいときこそノーブレス」,「本物の苦しさの先に本物の喜びが待っている」と…。

 もっとスマートに,もっと効果的に教えることができなかった先生を,どうか許してください。

 

 いよいよ明日は別れのとき…。

 君達との別れが,この上なく辛い先生は,

 きっと涙で前が見えなくなるでしょう。

 だけど,先生は,

 大好きな,大好きな君達の晴れ姿を,両の目を見開いて,しっかりと見届けよう。

 

 

 保護者の皆様,明日は小学校生活で関わらせていただいた全ての教職員を代表いたしまして,38人の子ども達への感謝の気持ち,そして,今後の飛躍への願いを込めて,大切なお子様の名前を精一杯呼ぼうと思っております。一人一人のお子様が,6年間の小学校生活の集大成を,その堂々たる姿で示されることでしょう。お子様の姿・顔・目をしっかりとご覧いただけたらと思います。

 今日の日まで,伯仙小学校教育にご理解をいただき,担任を支えてくださった保護者の皆様に心よりお礼を申し上げますとともに,お子様の今後のますますのご活躍をお祈りいたします。ご卒業おめでとうございます。

 

平成22年3月                     

米子市立伯仙小学校  6年1組担任  西村 健吾

 

 

西村 健吾(にしむら けんご)

米子市立福米東小学校 教諭
「豆腐のような通信を!(1.マメで 2.四角く 3.やわらかく 4.面白く)」をモットーに、学級経営に果たす通信の役割を見直し、日夜創意工夫に励んでいます。一つの実践提供になれば…。

同じテーマの執筆者
  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 安井 望

    神奈川県公立小学校勤務

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop