2013.01.23
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笑顔で学習課題をつくる

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

実験セット 観察の様子

 「学習課題をつくる」という活動は、単元のはじめに各教科で行われています。ただ、教科書はよくできていますから、読めば学習課題が書いてあります。
 特に理科では、学習課題が明示され、方法も幾通りか示され、その結果も書いてあり、最後には分かりやすくまとめてあります。ですから、子どもたちは教科書に書かれているとおりにやれば、だいたいうまくできるようになっています。
 極論すれば、実験や観察をしなくても、教科書をよく読んで覚えれば、テストはできると言えます。しかし、これでは理科のおもしろみがまったくないですね。ただの「知識としての理科」に過ぎません。

 学習は、日常のちょっとした疑問(はてな?)を追究するものだと考えています。

 たとえば、国語では元になる教材文を読んで、「何で、中心人物の気持ちがこうに変わるのだろう」「どうして、こんな結末になったのだろうか」などという疑問をもち、みんなで読解していくようにしています。
 理科では、簡単な実験をしたり写真を見せたりして、事実をとらえる目と疑問を見つける力をつけることから始めています。それが、自らの課題づくりにつながるからです。

 5年生の理科「もののとけ方」の単元では、次のようにして課題づくりをしました。

 まず、水に食塩が溶ける様子を観察することを伝えます。もちろん、単元名は板書し、昨年夏の臨海学校の体験を聞きながら進めていきます。この時点では、子どもたちは大した関心は示していません。(実は、意図的に何気なく進めています。)
 次に、以下の観察方法を指示します。ここでは、課題づくりのための簡単な実験ですので、考えさせることはしません。

 (1)200mlビーカーに、約200mlの水を入れる。
 (2)ティーフィルターに、食塩を薬さじで小さじ3杯入れる。
 (3)(1)に(2)を乗せてセットし、食塩が溶ける様子を絵と文でかく。

 子どもたちはグループ毎に準備をして、実験を始めました。開始早々、「何これ?」「モヤモヤしてる~!」「気持ち悪い~。」など、歓声とも言えない声や感想を発するようになりました(写真)。食塩が溶ける様子を絵と文で書くことを再度、指示しました。
 観察した様子が、およその絵と文で表現し終えた後、疑問をノートに書かせ、全員に発表してもらいました。発表された疑問は、類型化しながら板書しました(以下)。
 (1)本当に食塩は溶けているのか。
 (2)雨みたい(糸みたい、油みたい)のは、どうなっていくのか。
 (3)食塩と水の関係はどうなっているのか。
 (4)何か、下にたまるのか。
 (5)雨みたいのは何か。
 (6)なぜ、透明な液体が出てきたのか。
 (7)溶け方にきまりがあるのか。

 この板書を見ながら、「課題となりそうな疑問はどれか」を考えてもらいました。考える視点は、答えが容易に分かるものではなく、同時に調べられそうであることとしました。意見を出し合いながら集約し、最終的に二つの疑問が残りました。
 それは、(3)と(7)です。つまり、溶けることと質量の関係、溶解度の問題について調べていくことになりました。

 学習課題を自分のもの、自分事にするために、このような授業を仕組んでいます。課題を見つける力をつけることを重視しているのです。そのために、課題を見つけたくなる(課題を追究したくなる)ような学習環境を創り出すことを考えています。
 こうした授業づくりは、子ども以上に教師が楽しいですね。課題を自分のものとした子どもたちは、実に生き生きと学び出します。
 このように、毎日、子どもの笑顔が見られるような授業を目指しています。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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