2013.01.16
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朝の呼名は何のため?

カリタス小学校 教諭 長島 寛和

 皆さんの教室では、朝の会や健康観察の際、一人ひとりの名前を呼んでいますか? もし、読んでいるとしたら、それは何のために呼名をしているのでしょうか。今回は、呼名についての私自身のこだわりを書きたいと思います。

 私は教師になって依頼、原則、毎日、クラスの子どもたちの名前を呼んでいます。新採の頃は、先輩の先生方に「毎朝、子どもの名前を呼ぶといいですよ。中には、そのときしか声をかけてあげらない子どもなどもいるんですから」とアドバイスをいただいたので呼名をしていました。

 この呼名の仕方、先生方で千差万別だと思います。「長島寛和さん」「長島くん」「長島さん」「寛和さん」「寛和くん」「長島」「寛和」「あだな」いろいろでしょう。中には、班の名前を呼ぶという先生もいらっしゃいますね。「1班さん」などです。私は、子どもたちのフルネームに、男の子には「くん」、女の子には「さん」をつけて呼名をします。けっして、名字のみ、名前のみ、あだ名での呼名はしません。班をよぶと言うことは、どんなときもしません。なぜならば、すべての呼名のゴールを決めているからです。そのゴールとは、「卒業式」です。

 卒業式は、必ず、子どもたち一人ひとりを呼名します。この呼名を大切にしたいがためにフルネームで呼名をします。たとえ1年生の担任であってもです。私は2児の父親なのですが、名前は妻とよく考えて、考えて、考え抜いてつけました。その名前は、フルネームだからこそ成り立つ大切さを持っています。だからこそ、しっかりと名前を呼んでもらえるときには、フルネームで呼んでほしいという思いがあります。それぞれの子どもたちの保護者の皆さんも、もしかしたら同じような思いをもっておられるかもしれません。だからこそ、フルネームです。もちろん、子どもを呼ぶときにいつもフルネームというわけではありません。呼名に限ってです。

 さて、この呼名ですが、名前を呼ぶという面のほかに、子どもたちの「返事」があります。これも重要です。よく先輩方には、「子どもたちの返事を聞けば、その子の今の状況、病気にかかっていないか、家で何かあったかもしれないなどの情報が分かる」と言われたものでした。確かに、その通りです。きっと、この文章をお読みの方も異論はないと思います。しかし、私は、この返事に大きな二つの意味をもたせ、子どもたちに伝えています。一つ目は「元気に返事をすることで、呼名されるまでの気分を切り替えて、明るい気分は明るいまま、少し悩み事や心配事、思春期特有の照れがあっても、それを思いっきりクラスにもちこまない」ということです。いろいろな事情や気分をかかえている子どもがいることは百も承知なのですが、クラスという集団、公の場に入って生活する際には、気持ちを切り替えると言うことを教えたいのです。よく、大人でも朝から暗いあいさつや、思いっきりイライラを職員室に持ってくるなんて場合があるのですが、周りは気分がいいものではありませんよね。職員室のドアの外で切り替えてほしいと思いませんか?子どもたちに教室のドアの外でというのは酷ですから、朝の返事までの時間を与えています。その前に、前に書きました「あいさつ」でウォーミングアップをしているということもあります。クラス全員がしっかりと返事をできた日は、ほぼ毎日、何のトラブルもなく学校生活を送ることができました。もちろん、私の経験則ですが・・・。二つ目は「卒業式の日の返事が最高の返事になるように、1年生から1200回くらい練習をするのです」と言うことです。卒業式の日のたった1回の返事、時間にしたら0.5秒を最高の時にするために6年間の練習期間を与えているという意識で指導をします。毎日、毎日練習をさせても、卒業式の朝に「今日、返事はしっかりするように」という1回の指導と同じという返事もあるでしょう。しかし、私の信念として、「練習で120%になっているからこそ、本番で100%」「一夜漬けは役に立たない」という思いがあります。ですので、「言わせられた返事」ではなく、「普段の返事の成果の返事」をだしてほしいのです。

 変なこだわりと映るかもしれませんが、日々忙しい学校生活、「忙しい、忙しい」と口癖のように言う教員がいるほど多忙な毎日の中で、一瞬たりとも無駄な時間を作らない、遊んでいるように、ゆったり休んでいるように見えても、実はすべての活動は計画的で、ねらいがあるという教育活動を仕組んでいくことこそ、教員の仕事なのではないでしょうか。

 次回は、そろそろ「授業」に入っていきたいと思います。

長島 寛和(ながしま ひろかず)

カリタス小学校 教諭
公立小学校、大学附属小学校、私立小学校の3種の小学校を経験しました。それぞれの特徴を組み合わせた学校ができたらどんなにすてきな学校ができるかと、色々と思案しています。教師の勝負の場は「授業」と定め、学級経営と授業作りを愉しんでいます。

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