2012.09.24
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学級通信で教師の思いや指導方針を!(組立体操編)

米子市立福米東小学校 教諭 西村 健吾

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 前稿では,運動会の花形種目である「組立体操」について,事前に,テーマや動き, BGM,隊形(子どもの位置)などの情報を伝えることで,家庭でも運動会に向けた関心と気運を高めてもらうことをねらいとした文例をご紹介しました。

 

4-3.教師の思いや指導方針の発信(組立体操編)

 本稿では,その組立体操における,指導者の思い(方針)を綴った通信文例をご紹介。

 技の成功率,完成度,どのような要素(子ども達に身につけさせたい動き)を取り入れるか…など,組立体操で指導者がこだわる視点はそれぞれだと思います。が,私が最も重視するのは………,

「気をつけ」

です。しかも,なんとなく揃う中途半端な「気をつけ」ではなく,全員が黒目まで動かさない,「1mmも動かない気をつけ」です。

 

 それは,私が,組立体操の取り組みを通じて,子ども達に,技の習得のみならず,「心」を高めてほしいと願うからです。「組立体操を学んでほしい」(技を)というねらいとは別に,「組立体操で学んでほしい」(心を)という真のねらいがあるからです。 

 だからこそ伝えます。先生方に,子ども達に,保護者に…。指導の効果を最大限上げるべく。子ども達の心をしっかりと高めていくべく………。

 

実例20.最大の見所は「1mmも動かない気をつけ」です。 

 

 「LONDON 2012 ~Olympic Games~」の数ある見所の中でも,最大の見所は何と言っても「気をつけ」です。なぜならば,「気をつけ」が,「誰にでもできるものであるが,そこに心がなければできないもの」だと思うからです。

 

 子どもたちは,グループや大集団の大技,或いは倒立などの技術を要する演技などの成功に向けて躍起になって練習しています。無論,成功するにこしたことはないですし,指導者も,子どもたちの成功に向けて全力で支援していきます。

 しかし,これらのことは,いくらがんばっても必ずしも成功するとは限りません。オリンピック選手が,血と汗のにじむような猛練習をしていても,オリンピック本番で失敗してしまうことがあるように…,いくら練習しても成功の保障はないものです。

  

 一方,「気をつけ」はと言うと,これはもう,誰にでもできるのですから,絶対に失敗はありません。ただし,微動だにしない,足の指先から手の指先まで,もっと言えば目(黒目)に至るまで一切動かさない「気をつけ」となると話は少し違ってきます。人間動かないということは,かなりつらいことです。それどころか,一生懸命動くことよりも疲れることだったりします。しかし,このような微動だにしない「気をつけ」も,そこに心があれば可能になります。

 

 【20~30mの全力疾走の後,次の演技の成功に向けて,息をも殺して微動だにしない気をつけ】,【たとえ技に失敗してしまっても,それを何とか取り戻そうと1mの距離をも全力疾走し,指の先まで神経を集中させるような気をつけ】,これほど子どもたちの心が手に取るように分かる演技があるでしょうか?そして,不思議なことに,そんな「気をつけ」一つに気持ちを込める子ども達の心こそ,大技や技術を要する技を成功させる最大の要素だったりします。

 

 こうして一度に揃う「気をつけ」の瞬間は最高の瞬間です。何しろ,「気をつけ」が揃うということは,5・6年生全員の心が揃うということなのですから…。

 

 保護者の皆様,運動会当日の組立体操では,技が成功するか否かだけでなく,そんな子どもたちの心が表れる「気をつけ」にも是非ともご注目ください。 

  

 

 余談です…。昨年度,前任校にて,「東日本大震災で被災した小学校に組立体操のDVDを送る」という目的意識を子ども達に持たせて組立体操に取り組みました。

 

【その練習過程で,ある子どもが書いた日記】

 今日の通し練習では,いい組立ができた。その後,ある新聞記事を見せてもらった。そこには,「精いっぱい生き,希望の星になる」と書いてあった。「暗い中でも輝いた星は私たちを照らしてくれる」という言葉に心がふるえた。

 私は,この文を書いた小6の女の子以外の被災した人にも,私たちがこの組立体操をすることで…,精いっぱい歌を歌うことで…,笑顔になってほしい。だから私は,もし技が失敗したとしても,それを取り戻すような動きをしたい。砂も絶対に払わない。そんなことからも,気持ちが伝わればいいと思う。

 

【その日記とDVDを見た被災地の小学校の先生の感想】

 DVD見せていただきました。涙があふれて止まりませんでした。時間を忘れて,何度も何度も見てしまい,こんな時間になってしまいました。是非子ども達に見せたいと思います。「素晴らしい!」の一言です。

 

【DVDを見た被災地の小学校の子どもの感想】

 ぼくと同じ5年生とは思えないぐらい立派に演技していたことに驚きました。特に「1mmも動かない気をつけ」は,演技全体で感じることができ,涙がほほをつたわるほどでした。ぼくたちに「一人じゃない,大丈夫」と伝えてくれているようでした。
 

 みんなの背中が真っ黒になり,砂だらけになっても,だれ一人払う子がいないことに,真剣に,必死に取り組んでいるのだと感じて,勇気や希望をたくさんもらえました。下で支えている人の大変さが分かりましたが,互いに信頼し合っていることに感心させられました。「届け,希望の光」がしっかり伝わりました。米子と東北は,遠く離れているけれど,「絆」の言葉のように,同じ気持ちでつながっていると思います。心でつながっていることに感謝したいです。
 

 

 本校の本年度の運動会まで残り1週間(9/29)。

 『観る者の心を動かすのは,技の成功はもちろんだが,それ以上に,君達の「心」。その「心」を映し出すのは,君達の「表情」であり,「目」であり,「1mmも動かない気をつけ」であり,「1mの距離も全力疾走」である。』…と,今日も子ども達に語ります。

西村 健吾(にしむら けんご)

米子市立福米東小学校 教諭
「豆腐のような通信を!(1.マメで 2.四角く 3.やわらかく 4.面白く)」をモットーに、学級経営に果たす通信の役割を見直し、日夜創意工夫に励んでいます。一つの実践提供になれば…。

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  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

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