2012.09.07
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メインファシリテーターとして

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

討議風景 発表

 みなさんは、「ファシリテーション」って知っていますか。最近は、教育ファシリテーションとか、人間関係ファシリテーションなどという言葉も普及しつつありますから、どこかで聞いたことがあるかもしれませんね。

 「ファシリテーション」とは、元々、会議運営システムの一つなのです。一般的に行われる会議は、『決める』事を目標とするのに対し、このファシリテーション型会議は『合意形成』を目標とすることに違いがあります。
 ファシリテーション型会議とその他の会議の最も大きな違いは、「楽しい雰囲気で行う」と言うことです。4,5人のグループ分けされた参加者は、お菓子を食べながらコーヒーやお茶を飲み、楽しい雰囲気の中で活発に意見を交換し合うのです。この雰囲気こそが一体感を感じさせ、楽しいと思う大きな要素になるのです。
 その楽しい雰囲気を持つファシリテーション型会議は、「ファシリテーター」という存在に依るところが大きいのです。そして、そのファシリテーターにより、参加者が活性化される事で、円滑な『合意形成』が促されるという特徴も持っているのです。このファシリテーターは、専門のスキルが必要となり、何回かの研修を受けなければならないのです。

 さて、群馬県藤岡市は群馬県南部に位置し、2008年よりファシリテーション活用型市民討議会を始めました。同討議会は、藤岡市民の幅広い意見を取り入れ、これまで行政に声を届けるきっかけの少なかった市民(サイレントマジョリティー)に参加を呼びかけ、話し合いを行い、参加者から提案された意見を今後の行政施策に反映させることを目的とするものです。
 2010年から藤岡市民討議会は、「ふじおか市民討議会実行委員会」で運営されるようになりました。「ふじおか市民討議会実行委員会」は、「協働」という理念のもとに、藤岡市民・藤岡青年会議所・藤岡市役所が、同じ立場で一体となることで、より円滑な企画・運営を実現するように努めています。

 私は、この年から運営に加わるようになりました。そして、2011年は副実行委員長として、2012年はメインファシリテーターの一人として、ふじおか市民討議会を行いました。メインファシリテーターは、3回行われる討議会を仕切る(進行する)とともに、各グループの話し合いの活性化を図り、会議の明るく楽しい雰囲気づくりに努めます。

 8月18日に行われた「みんなで言ってんべぇ やってんべぇ ふじおか市民討議会2012」の話し合いテーマは、『出てこいや。発掘発見 ふじおか市』でした。市内にたくさんある観光スポット、特産品や店舗などの情報を共有しながら、改めて自分たちの地域を見直していくというものです。参加者は、市内在住者から無作為抽出された1000人の中から参加を希望した40名です。3つのテーマについて、午前9時から午後5時まで熱心に、楽しく話し合いました。
 3つの討議テーマは、次の通りです。
第1討議テーマ「ココがおすすめ!藤岡の観光の目玉をさがしてみよう」
第2討議テーマ「藤岡はこう巡れ!藤岡のおすすめ観光モデルコースの案を皆で出し合おう」
第3討議テーマ「あなたが観光大使!藤岡の観光をPRするアイディアを皆で出し合おう」


 メインファシリテーターは、この3回の話し合いを『気楽に楽しく中身の濃い』ものにする責任があります。
 まず、5人1組のグループでじゃんけんをしてもらい、勝った人から1,2,3,4,5の番号をつけます。その番号に従って、進行係・時計係・記録係・発表係・盛り上げ係を決めます。決まったら、進行係の司会で、一人1分の自己紹介をしてもらいます。
 次に、討議テーマと討議の進め方を説明します。個人で付箋に意見を書き、それを模造紙に貼りながら意見を共有します(写真 左)。その意見をグループでまとめながら絞り込んでいきます。最終的に、3つにまとめたものを発表します(写真 右)。最後に、全員で投票し、参加者全員の合意形成を図るようにします。

 文章で書くとこれだけですが、一般市民の方に、討議会の趣旨から討議方法を理解してもらい、実際に討議をして、合意形成を図るというのは大変なことです。しかも、限られた時間内に行わなければならないのです。しかし、ほぼ1年かけて、実行委員会で練ってきたものですから、運営・会場・広報・事務局が一体となって、すばらしい市民討議会を行うことができました。
 それは、どの参加者も笑顔で帰って行ったからです。もちろん、討議会で出された意見も、事前に予想していたものより、多様で納得するものが多かったです。なお、合意形成が図られた意見は、実行委員会でまとめて、行政に提言することになっています。

 ファシリテーションは、今、注目されている会議手法であるとともに、教育や人間関係づくりにも使えるものです。同時に、人間としてのスキルアップにも役立つものだと思います。
 今回のメインファシリテーターとしての経験を生かして、それを教育に生かすとともに、自分自身、人間として成長していきたいと思いました。
 猛暑・酷暑の夏でしたが、とてもいい勉強になりました。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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