2012.08.10
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鵜飼いの伝統から学ぶ

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

長良川 鵜舟 総がらみ

 この夏も様々な場所、機会で学んでいます。今回は、岐阜県長良川で行われている鵜飼いでの学びを紹介します。
 一見、教育とは関わりのないと思われる鵜飼いを見て、何を学んできたのでしょうか。

 鵜飼が行われている長良川中流域は、岐阜市の長良橋から上流域で、1985年に「名水100選」、1998年に環境省認定「日本の水浴場55選」にも選定されています。行ってみると、付近には大型のホテルや住宅がありますが、確かにきれいで、においもありません。水遊びをしたくなります。南には金華山とその山頂にそびえる岐阜城は、歴史も感じさせてくれます(写真 左)。

  ところで、鵜飼いは鵜匠が鵜を操って魚を捕まえる漁法で、約1300年の歴史があり、時の権力者たちに保護されてきました。織田信長は「鵜匠」という地位を与えて、鵜飼いを保護したと言われていて、徳川家康も岐阜を訪れて鵜飼いを見物・保護し、岐阜でつくらせた鮎鮨を江戸まで運ばせたそうです。

  長良川の鵜匠は6人で、代々世襲で親から子へとその技が受け継がれ、宮内庁から式部職鵜匠という職名が与えられています。また、長良川の鵜飼用具一式122点は、国の重要有形民俗文化財に、長良川鵜飼漁は岐阜県重要無形民俗文化財にも指定されているそうです。
 その鵜匠の正装は、かがり火から髪の毛を守るために風折烏帽子をかぶり、漁服を身にまとい、火の粉を防ぐ胸あてをつけます。また、腰から下は腰蓑をつけるなど、まさに古式ゆかしい装束です。

 鵜飼いの期間中は、毎晩、19時45分に鵜飼い船が一斉に出航します。当日も数十隻、500人以上の観光客が繰り出しました。それぞれの待機場所に舟を止めて待っていると、まもなく、川上から鵜舟が下ってきます。

 鵜舟に乗っているのは、鵜匠と船頭(とも乗り・中乗り)の3人です。鵜匠は舳先で10羽前後の鵜を操り、とも乗りはとも(舟の後ろの方)で舟を操ります。中乗りは両者の間にいて、2人の補佐をします。
 つまり、一艘の鵜舟は、鵜と3人の協力体制で、鵜飼いを行っているのです。
 また、鵜飼いで使う鵜は、もともと野生の海鵜を訓練したもので、鵜匠は1人前の鵜に育てるために毎日の生活をともにして2~3年かけて育てるそうです。
 鵜匠と鵜は教師と子どもの関係に似ていて(操るという意味ではなく、いい関係という意味で)、鵜舟は学級のように(一体という意味)思えました。

 ところで、鵜舟は全部で6艘あります。鵜飼いの船出の順番はくじ引きで決めます。その際、最も魚を取りやすいのは川の中央にいる舟です。続いて、川岸近くの舟が有利であり、中間に位置する舟は一番不利になります。このまま漁を続けると取れる魚の量に差が出るので、6艘の舟は急な瀬を迎えるごとに位置を変える決まりとなっているのだそうです。

 さて、川上から近づいてくる鵜舟を見ると、写真で見たようにかがり火がたかれ、その光を頼りに鵜が魚を追いかけている様子が見られました。
 鵜匠は、左手で10~12本の手縄のたばをにぎり、右手でその1本1本をさばきます。目は手縄の先の鵜に集中し、鵜ののどもとのふくらみをとらえ、冷静な判断力と機敏な動き、そして的確な手さばきで、鵜飼いを行っていました(写真 中)。
 
 鵜飼いのクライマックスは、「総がらみ」と言われるものです。「総がらみ」とは、6艘の舟が一体となって浅瀬に魚を追い込む漁の仕方です。つまり、鵜舟が協力して、その日の最後の漁を行うのです。
 一通りかり下った後、たくさんの遊覧船が停留する前で、鵜舟が一列に並び勢揃いして岸に寄る光景は、とても幻想的な風景でした(写真 右)。

 こうした6艘の鵜舟の在り方は、学年経営や学級経営に通じるものを感じました。

 1300年もの伝統を持つ文化財から、学級づくりや学年経営の在り方を再考するヒントを得たように思いました。
 「鵜飼いなんか、大したことはないのでは。」と否定的な考えを持って行きましたが、清々しい思いで帰ってくることができました。これは、「日本の伝統」の持つ重みによるものではないかと思いました。

 そのすばらしい日本のため、将来を担う子どもたちのために何ができるか、を考えるいい機会となりました。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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