2012.06.15
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子どもの発想から楽しい授業づくり

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

回路

 授業の理想は、子どもの発想や意見を元にして、課題をつくり検証していくような観察・実験ができたらよいと思っています。逆に、教科書を先読みした子どもが、答えや理想的な解法を言ってしまうと、つまらない授業になってしまいます。理科では、これからやるべき学習と学習方法、そして答えが教科書に丁寧に記されています。
 子どもの体験や経験が少ない中、教科書もうまく使いつつ、子どもが目的を持って、夢中になる問題解決学習を、どのようにして展開しようかと毎日、試行錯誤しています。

 4年生の理科では、「電気のはたらき」という単元の学習をしています。この単元の学習指導要領に示されているねらいは、以下の通りです。

 乾電池や光電池に豆電球やモーターなどをつなぎ,乾電池や光電池の働きを調べ,電気の働きについての考えをもつことができるようにする。
ア 乾電池の数やつなぎ方を変えると、豆電球の明るさやモーターの回り方が変わること。
イ 光電池を使ってモーターを回すことなどができること。

 この学習では、まず、身の回りにある電気製品を書き出してもらいました。すると、いくつも見つけることができないのです。これが、今の子どもたちの実態だと感じました。そこで、何人かの子どもに発表してもらいました。すると、見つける視点が分かり、どの子も10個以上、書くことができるようになりました。
 つまり、この活動で、子どもたちは身の回りに多く電気製品があることを確認することになり、自分たちはその電気製品のおかげで、便利で豊かな生活をしていることに気づくことができました。
 こうした導入をすることで、必然的に「電気とは何なのか」という疑問を持てるようになりました。つまり、「電気の性質を調べる学習」という目的が持てました。

 さて、その目的を達成するために、いくつかの実験をしながら学習を進めていきました。その学習過程は、次のようです。

 1 基本実験キット(導線、電池ボックス、スイッチ)を作る
 2 回路記号を覚える。(電池、豆電球、モーター、検流計)
 3 基本実験キットを使って、豆電球をつける。(3年生の復習と回路図の活用)
 4 「なぜ、豆電球がつくか」を科学的に考える。(仮説1を立てる)
 5 仮説1を検証する実験をする(モーターの回転方向や検流計の振れ方)。→『電流』
   と『電流の向き』を知る。
 6 回路図を見て直列回路(乾電池2個)をつくり、豆電球・モーター・検流計の様子を乾電池1個の時と比べる。
 7 結果から考察したことを、仮説2とする。
 8 仮説2を検証する実験(並列回路)をする。(豆電球の明るさ、モーターの回転方向、検流計の振れ方)
 9 直列つなぎと並列つなぎについて、まとめる。
 10 学校にある太陽光発電について知っていることをあげる。
 11 光電池の発電の様子(角度と光の強さの関係)を調べる。
 12 「電気のはたらき」のまとめをする。
 13 電気を使ったおもちゃづくりをする。

 最初に、基本実験キット(導線、電池ボックス、スイッチ)を作りましたが、こうした作業に慣れていないためか、予想外に時間がかかりました。できた子が先生役になり、グループやグループ外の友だちに教えていくようにしました。

 その後の学習は、子どもの発想やつぶやきを拾いなが進めていきました。たとえば、次のようです。

 学習過程3,4は、2時間続きの通称「りかちゃんの日」に行いました。
 覚えた回路記号を用いた回路図の通りに、豆電球と電池ボックス、スイッチをつなぎ、豆電球を点灯させました。そこで、
「なぜ、豆電球がついたのか、『りかちゃんらしく』考えよう。」
という問題を出しました。ノートに自分の考えを書いて、全員に発表してもらいました。ここでは、多くの子は「回路を作ったから」とか「電池に正しくつないだから」と書いていました。間違えではありませんが、これでは3年生レベルなのです。もう少し、「理由を科学的にちゃんと」考えないとダメなのです。すると、Aくんが
「電池の電気が、導線を通じて豆電球に電気がいって豆電球がついたと思います。」
と発表し、しばらくすると、Bくんが
「電池の電気が+、-極の両方から豆電球にいったから、豆電球がついたと思います。」
と発表してくれました。
 全員の発表が終わった後で、
「似たような発表がたくさんありましたが、それは3年生レベルですね。でも、2人だけ 『りかちゃんらしい』発表していましたね。誰だか、分かりますか。」
と言い、子どもたちの評価能力を問いました。すると、多くの子どもたちは、AくんまたはBくんの名前を挙げました。
 そこで、この二人の考えは「科学的」であるとほめ、それに気づくことができた子どもたちもほめました。次に、回路図に二人の考える「電気の流れ」を書き込み(写真)、どちらが合っているかを全員に予想させた上で、実験で確かめることにしました。

 このように、一人一人で考え、よりよい考えに絞り込み、最終予想を立て、実験で確認するのが、『実感する理科』になるのではないかと考えています。今回の確認実験は、検流計(針の振れ方)とモーター(回転方向)を使いました。
 子どもたちには、このような自分の予想した考えを確かめることを、理科の楽しさの一つとしてとらえてほしいと思っています。

 子どもの発想から課題をつくり授業を進めていくことは、適度な緊張感があります。その適度な緊張感を楽しみながら、毎日を送っています。

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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