「理科離れ」という言葉があります。これは、理科に対する生徒・児童の興味・関心が低くなったり、授業における理解力が低下したり、日常生活において重要と思われる基礎的な科学的知識を持たない人々が増えていると言われる一連の議論のことです。
国際教育到達度評価学会の「国際数学・理科教育動向調査」(2007年)では、理科の勉強が楽しいですかとの質問に「強くそう思う」と答えたのは、中学2年で9%(国際平均値35%)、小学4年で34%(同55%)。「そう思わない」「まったくそう思わない」と答えた割合は中学2年61%(同33%)、小学4年30%(同20%)だそうです。
その原因としては、(1)かつての詰め込み教育では、正解を求める単なる暗記が求められていた、(2)ゆとり教育の推進により、教科書で学ぶ内容が断片的になった、(3)自然触れる機会の減少、(4)子どもの好奇心・遊び・趣味などの変化、などが考えられます。
技術で成り立ってきた日本にとっては、理系離れによる技術スタッフの減少や技術力の低下は、将来的に死活問題となりうると懸念されています。
そこで、理科教師でもある私は、理科を教科書中心の授業ではなく、身近な事象を学習の起点としたり、子どもたちの生活や他の教科と関連づけたりしてきました。こうすることで、「教科書にあるからやる」から「自分で疑問を見つけて実験して確かめる」という、理科本来の課題解決学習になるようにしてきました。
3年生の3月に入り、理科は「物の重さを比べよう」という単元を学習することになっていました。ところが、算数でも似ている単元「重さをはかろう」を学習することになっています。
理科のねらいは、「物の重さや体積を比較しながら調べ、物の形や体積と重さの関係をとらえる」です。一方、算数のねらいは、「重さについて、およその見当を付けたり、目的に応じて単位や計器を適切に選んで測定したりできる」です。
そこで、この2教科のねらいの相違を明確にしながら、相乗効果を発揮する学習ができるようにしました。
具体的には、まず、算数の導入で、消しゴムの重さ比べをするにはどうしたらよいかを考えました。そこで、自作てんびんを使うと、微妙な重さの物の重さが比べられることを知りました(写真 左)。
しかし、重さを比べるのは理科なので、大きさの違う積み木、木と紙の箱などを比べました。また、立方体の粘土の重さを量った後、丸くしたり、細長くしたり、分けたりして、重さがどうなるかを予想しながら実験をして、きまりを見つけていきました(写真 中)。その際、重さを量るために使った道具が台ばかりです。
台ばかりで物の重さが量れることは、算数の時間に学習したことが活かされることを実感させるようにしました(写真 右)。算数では、秤量(はかりではかれる最大値)が1kg、2kg、4kg、8kgの台ばかりの使い方を学習しましたが、個人で読み、チームで確認し、教師がチェックするといった学習をしてきました。
子どもたちは、クイズやゲームを楽しむように算数と理科の学習を進めることができました。
理科も算数も、この重さに関する単元が3年生の最後です。こうした学習を展開することで、学びへの興味を持って4年生へ進めることになったと思っています。さらなる学びへの期待を胸に、まもなく3年時の学習を修了することになるでしょう。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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