2012.03.08
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みんなで育ちを見つめていくこと

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

気が付けばもう3月。僕の職場もこれから年度末から新しい年度へ一気になだれ込むことになります。今年度分の原稿も残すところ2回となりました。ということで書き残した話題を今回と次回分けて書かせてもらおうかと思っています。上手くまとまればよいのですが。

  前回の原稿の中で、平成24年度特別支援教育関係予算の中で新規事業として計上された「早期からの教育相談・支援体制構築事業」に関しての情報を書かせて頂きました。
 前任校では早期療育とのつながりを重視した支援スタンスでコーディネーター業務を行っていました。本来は業務の位置づけ上、「教育機関への支援」が主ですので、業務外の仕事ということにもなります。前任校では地元の町のご協力で「視察」という形を取り、毎回の乳幼児検診にも参加させて頂いていました。北海道は早期療育において他都府県とは違う独特のシステムを持っているようなのですが、乳幼児健診から療育につながる流れを僕が知っている流れで簡単に紹介します。

 まずは、規定上は1歳未満と1歳半~2歳、3歳~4歳の3回行えばよいのですが、僕の住んでいた自治体では3歳までに5回の健診の機会が設けられていました。このほかに自治体によっては5歳の時点等で検診を行っている自治体もあります。3歳時健診の次のオフィシャルの検診が就学前検診となり、3年間の空白というものができますので細やかに検診を行うことで得られるメリットというものも良く理解できます。
 健診では、受付を済ませた保護者が栄養士、歯科衛生士、保健師、医師が待機するブースに順に回っていき、発育や養育状況に関しての検査をしてもらいます。その中で身体に障害を持つ可能性があるなど注意深く子育てを行う必要があると判断された場合は発達相談の担当ブースに行くことになります。そこで各自治体毎か周辺自治体と共同で設置されている療育機関「母子通園センター(現在、子ども発達支援センターに改称)」への通園を促されるという流れです。健診終了後に栄養士、歯科衛生士、保健師、医師等が集まり気がかりな乳幼児とその保護者に関しての情報交換と今後への方策が話し合われます。当時は児童虐待が大きくクローズアップされ始めた時でしたので、発見と防止の意味合いも大きい物でした。新規に対応が求められる場合は保健師による家庭訪問等が行われ、継続ケースであって療育が必要と考えられる場合でも家庭が必要でないと判断した場合は利用が見られない事もあります。実際には、なかなか健診を受けたがらないというケースもあります。健診の終了間際に見えられて「時間がないから」と発達相談等の促しを断り、足早に立ち去る方もいらっしゃるようです。以前受けた研修会の中で医師である講師の方が「早く済ませたいと早くから並んでいる方に比べ、不安を感じている家庭ほど終了間際に会場にいらっしゃる」「まるで、『私達のことはほっといて欲しい』といっているようだ。」と表現されていました。
 実際に保護者の方は3歳以前に「他の子と何かが違う」と感じられているようです。地域の母子通園センターにおじゃましていたときも、療育の合間に教育相談を受けることが度々ありました。「何かが違う」と感じていても、原因や具体的な対応が解らず、自分の子育てのせいであると抱え込んでしまい、祖父母からの批判や逆に「気にしすぎ」との声、父親の協力が得られる事もないままにお母さんがつぶれてしまうこともあります。
 療育では、お子さんに対し発達を促せるような様々なアプローチが行われます。そこで見られた成長を一緒に喜び合い、
「育ち方は違うけれども、確かに成長を続ける我が子」
を確認することで、家庭での関わり方のヒントにして頂いたり、同じ悩みを持つ親同士でのつながりによるピアカウンセリング効果も期待できるところです。ただでさえ子育てに関して孤立化しやすい社会ですので、療育の意味合いはお子さん本人に対してと同じように保護者を支援する部分が大きい物と思います。
 
 療育自体は小学校に入学しても続けられますし、学校はお子さんに対して教育を行う場所ですので役割をしっかり分けて取り組む事も必要です。
 しかし、家庭ぐるみで支えるという視点も持っていたいと考えています。学校にいる時間はその子の生活の断片に過ぎないのですから。少ない懇談等の機会で大変さやつらさを少しでも分けてもらえたら。

 でも学校で抱えるにはあまりにも時間がありません。やはり「つながり」の中で育ちを支えていく事が必要ですよね。

 みんなで子供の育ちを見つめていくこと。親が孤立化しやすい現在。やがて全ての子ども達に広がっていくことを願います。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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