2012.01.26
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春に向けて

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 僕の学校では23日までの長い冬休みも終わり、子ども達の元気な声が戻ってきました。3学期といえども正味2か月ほど。あっという間に今年度も終わりそうです。時間に流されないよう気を引き締めて。

 さて、春に向けてニュースでは入学試験の話題も目にするようになりました。本校に来る予定の子どもたちもほとんどのご家庭で就学に向けての相談等も済み、様々な迷いや望みの中で準備を進めていることと思います。小中高のそれぞれのステージが変わる段階で就学するお子さんもいれば転校という形での就学を選ばれる方もいらっしゃいます。

 少子化の流れとは逆に児童生徒数が増えて行く傾向は本校でも他の特別支援学校と同じ状況にあります。義務教育段階のお子さんの就学に関しては市の就学指導委員会を経て来る形になりますので我々としては決定を受け入れる形に過ぎないのですが、保護者の意向というものも現在では極力組み入れる形での決定ですので、その「思い」というものを想像することがよくあります。「子どもは僕にとっての大切な存在です。あなたにとっても大切な大切な存在なんでしょうね。ただ少しでもこの子にとっての幸せな道を歩いてもらえるように様々な迷いの中で望みを託したのでしょうね。」などと。 

 「価値観が多様化した現在」という表現は良く聞くのですが、生きづらさを抱える人たちを受け入れる社会の裾野が広がったかと言えばそうではない気もします。働き方や生き方などは本人が望まなくてもそうせざるを得ない状況下の方のほうが多いようにも思えます。自分の中に培われてきたはずの価値観も実は社会から定義付けされているのでは無いのかなと。特別支援教育が進むことで様々なレベルでの理解が広がり特別支援学校を選択する数は減っていくのではという意見を聞いたことがありますが、現実は逆の動きです。社会に不安な要素が多ければ、少しでも保障や安心を求めるのは当然の流れでしょう。

 先日受けた研修でも特別支援教育の高校段階での話題が出ていました。現在は自分のクラスの事で精一杯ですので最近の動向には疎かったので改めて考えさせられました。講師の方からは、いわゆる底辺校で高校での教育に付いていけない子ども達の中途退学に関する問題に対して「入学させたからには責任を持って卒業するまで面倒を見るという思いを持って学校は頑張って欲しい。高等教育の“質”を保障するためにそれが難しければ初めから入学させないで欲しい。」といった旨のお話しがありました。数年前、地域での相談業務を行っていた時に「せめて高校は行かせたい」といった思いを聞くことが何度かありました。96%程の高校進学率の現在では、行くのがほぼ当たり前の社会に生きていることになります。北海道の地方の高校では定員割れの所が多くあります。全てとは言えませんが希望すれば入りやすい状況もあります。いかに「多様化した価値観の現在社会」であっても、このことに関しては「当たり前」を選ぶのは当然でしょう。それが少しでも幸せな道を歩める事だと思いを託せば。 

  実は昨年に僕自身も人生の選択をするような場面を経験しました。迷い、考え、決めた時に、ある方から僕の宝物になるような言葉をいただいたので紹介します。


  人生、選んだことが正解です。
 たとえ、結果が出なくて次の道を選び直したとしても、次の道に進むための必要な一工程だったということもあります。
 先はわからないけれど、今選んだことが正解ですから、どうぞ自信をもって前に進んでください。
 ボクらは変わらず応援していますので。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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