3学期が始まり、多くの学級では、子どもたちに「今年の目標」または「3学期の目標」を書かせたのではないでしょうか。
私は、教師としての目標を毎年立てています。誰に見せるわけでも言うわけではありませんが、今年はこんな教育をやってみたいというものを考えて、新年度から実践するようにしています。
そう言っても、なかなか自律的に考えたり実践したりするのが難しい場合があります。そういう時は、他律的な方法をよく用います。それは、自分の環境を変えてみたり、まったく別の側面から見たりすることで、自分自身の気付きを誘う方法です。
この冬季休業中に宮古諸島に行ってきました。その中心の宮古島へは、東京・羽田空港から那覇空港経由で約1800km、時間にして3時間程度の道のりです。
宮古島は、他の沖縄の島々と同じで、サトウキビを中心とする農業(写真)と観光産業(写真)で成り立っている島です。ただ、バブル崩壊後の現在は、農業も観光産業もやや厳しい状況にあるようです。
今回、宮古島を訪れた理由の一つは、宮古島の固有種であるミヤコマドボタルを探して見ることでした。ミヤコマドボタルは、ほぼ1年中、成虫を見ることができるホタルの1種です。ですから、冬でも成虫が光る姿を見ることが可能なのです。
実際、3年前の12月には、西表島でオオシママドボタルの成虫を見つけ、その光る様子を観察することができました。ただ、今回のミヤコマドボタルは小型種であり、レッドデータ種にも指定されているものなので、残念ながら発見することはできませんでした。
しかし、もう一つの宮古島を訪れた理由は、解決したように思っています。その理由とは、「沖縄では、自分の住んでいる島のそれぞれの文化に誇りを持ち、自然に伝承しようとする姿勢が強いのではないか」という仮説を自分なりに確かめたかったのです。
私のこれまでの感覚では、沖縄本島も八重山諸島も今回の宮古諸島も、「沖縄」というひとくくりでしかありませんでした。イメージとしては、観光とサトウキビ、ちんすこうと塩です。
しかし、沖縄本島に続いて、八重山諸島、久米島に行くことで、前述の仮説を持つようになりました。そして今回の宮古諸島行き。確かに、宮古島には宮古島にしかないものがありました。特に、言葉は顕著でした。
たとえば、「ようこそ」のことを沖縄本島では「めんそ~れ」ですが、八重山諸島では「お~りと~り」、宮古島では「んみゃ~ち」です。「ありがとう」は、沖縄本島では、「にふぇ~で~びる」ですが、八重山諸島では「み~ふぁいゆ~」、宮古島では「たんでぃがたんでぃ」なのです。
おもしろい話として、宮古の方言では「ん」で始まる言葉があるので、「しりとり」がしにくいとも言われるそうです。また、小さな「っ」で始まる言葉もあるそうです。
言葉は、時代とともにもっとも変わりやすいものでもあります。人や物の交流が盛んである現在でも、こうした言葉が連綿と受け継がれていることは、自分たちの文化を大切にする姿勢の表れと思いました。おそらく、様々な生活様式についても同じなのではないでしょうか。
こうした自分たちの文化を自然に愛する姿勢は、大いに学ばなければならないと思いました。宮古諸島を巡り、体験したことから、今年の教師としての目標を明確にすることができました。
それは、自分の足下である家族や友だち、自然といった『すべての環境を大切にできる教育の創造』です。
宮古言葉に「ずみっ」(最高)という言葉があります。自分にも他の人にも、周りのすべてに「ずみっ」って言える子どもと子どもたちを育てたいと思いました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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