今、正に世の中は、クリスマスムード一色といってもいいでしょう。クリスマスの少し前の12月4日から10日までは「第63回人権週間」でした。
この時期に人権週間が設定されたわけは、国際連合が1948年(昭和23年)12月10日の第3回総会において、「世界人権宣言」を採択したことに由来しています。
人権尊重思想の普及高揚を図るため、全国でシンポジウム、講演会、映画会等が行われ、学校教育の場でも人権意識を高め、その実践力を身に付けるような取り組みが行われています。
本校でも昨年度から、この「人権週間」を含む期間に「人権月間」を設定しました。この間に、DVDの視聴、道徳や学活などで関連学習をして人権標語や人権作文を書いたり、自身への振り返りを深めたりすることで、人権を見つめ直したりする学習を展開しました。
私の学級では、『行為の意味』というテーマで、次のような授業を授業参観で行いました。ねらいは、2の「主として他の人とのかかわりに関すること」の(2)「相手のことを思いやり、進んで親切にする。」です。
授業の導入では、大型テレビに『もうすぐ○○ですね。』と写し、「○○には何が入るでしょうか。」と聞きました。子どもたちからは、「持久走大会、冬、お正月、4年生」という答えが返ってきました。「もうちょっと近いところでは?」と聞くと、「クリスマスです。」という答えになりました。
そこで、「クリスマスと言えば、『ジングルベル』ですが、この歌を知っていますか。」と、プレゼンテーションをしながら聞きました。「知っています。」という大きな声がしました。
「それでは、みんなで歌いましょう。」
ところが、最初のフレーズしか歌えないので、用意しておいた歌詞カードを配り、元気よく歌いました。いいえ、歌って踊りました!?歌い終わったところで、
「しか~し。」
と言って、「今は道徳だよ。」というプレゼンテーション。子どもも保護者も苦笑!?
ここからが、本題です。ある人物の写真をプレゼンしました。
T「この人は誰でしょうか。」(予想する1)
C(しばらく考えた後で、)「・・・ジングルベルを作った人。」
T「この人は、宮澤章二さんと言います。ジングルベルの歌をつくった人です。もしかしたら、どこかで見かけた名前かもしれませんよ。」(期待と記憶をたどらせる)
T「では、今日のテーマをノートに書きましょう。」(○○の意味と板書)
T「○○には何が入るでしょうか。」(予想する2)
T「実は、『行為』が入り、『行為の意味』というのがテーマです。」
「では、『行為』とは何か、国語辞典を引いて、ノートに書きましょう。書けたら、繰り返し読みましょう。」(『行為』とは、行いのこと)
T「ところで、宮澤章二さんとの関係は何でしょうね。」(予想する3)
T「次の映像を見てください。」
(ACのCMを視聴させると、知っている・見たことがあるという小声がする。)
T「高校生の男の子に注目して、その行為をよく見てください。」(見る視点を与える)
(再度、ACのCMを視聴する。)
T「どんな高校生だと思いますか。」
C「やさしい。」(多くの児童が『優しい』を含んだ発言をする。)
T「本当かどうか、もう一度、見てください。」(視点を明確にして見る)
『しかし』というプレゼンテーションを提示して、
T「しかし、行為として行動しなければ、その本当の気持ちは・・何でしょうか。」
C「わかりません。」「見えません。」
T「では、ノートに赤鉛筆で書きましょう。『行動しなければ、やさしさはわからない。(自分のよさが見えない)』」
書き終わったら、ACのCMの台詞をプレゼンし、みんなで読む。
T「そろそろ、ジングルベルを作った宮澤章二さんとの関係が分かってきた人もいるのではないでしょうか。」
さっき書いてあったという小声が聞こえる。
T「そうです、このCMの詩は、宮澤章二さんが書いたものなのです。そして、これは、詩の一部なのです。」
T「みんなは、詩の全文が知りたいですか。」
C「知りた~い。」
T「知りたいと言ってくれてありがとう。詩を用意してきました。これです。」
プレゼンするとともに、教師がゆっくり読む。
T「この詩のキーワードに『積極的』があります。意味を国語辞典で引きましょう。」
T「この詩は何連ですか。」
C「4連です。」
T「宮澤さんが一番言いたいことは、4連目に書かれています。全文を印刷した紙を配りますので、今度は自分で読んでください。」
詩の全文を印刷した紙を配る。
T「では、ノートに今日の学び、『行為の意味』の詩を知って、感じたことを書きましょう。」
子どもがノートに書いたことを紹介します。
Aさん:わたしは、宮澤章二さんのつくった詩を読んだり聞いたりして、進んでいろいろなことをしようと思いました。そして、行動しなければ、やさしさは伝わらないことを知りました。今から、いろいろなことを進んでして、やさしい心やよい心がふえるようにして、よい人間になろうと思いました。
Bさん:『行為の意味』の詩はとてもよく、勇気をもらえるような詩だと感じました。行為は、どれほど大切なのだろうと考えました。でも、詩を読んでいくうちに、行為の大切さを知りました。行為というのは、簡単にできることもあるけれど、なかなかできないことがあることを知りました。でも、勇気をふりしぼり、なかなかできないことをへらして、よい人になりたいです。宮澤章二さんは、人間の大切さを教えてくれました。この人生を大切にして、これからも楽しくすごしたいです。
教師が多く語らずとも、子どもが感じ、考えてくれていることを再認識しました。また、「他人事を自分事にしようとする」子どもが育っていることを感じ、担任としてもうれしく思いました。
ジングルベルを基点に、教師も子どもも、そして保護者も、多くの学びをすることができました。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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