2011.12.15
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余暇

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 この原稿を書くのは大抵、日曜の夜の作業にさせて頂いています。この週末は、土曜に息子達が見たがっていた映画に連れて行き、日曜は長男の学習発表会と買い物(調理学習の準備ですが)に費やさせて頂きました。我が家の休日の余暇といえば大抵が買い物に出たり、雪の降る前は近くの公園に連れて行くというパターンが多く、それ程バリエーションがあるわけではありません。家でごろごろなんてのも、お金がかからないので。どこのご家庭もそうかと思いますが、それほど大きなイベントが続く物でもありませんよね。少し前までは毎週のように週末は研修会に出かけていましたので、家族サービスをほとんどできていない時期もありました。今は少し罪滅ぼし的な意識もあります。

さて、僕たちが受け持っている子どもたちのことに話題を移させてもらいます。今まで勤めていた学校は、寄宿舎に入舎している子どもたちがほとんどでしたので週末というのはとても子どもたちにとって特別な物でした。中には夏休みと冬休みしか帰省しないお子さんもいました。週末に友達がほとんど帰っていく中、玄関で「ママくる?」と就寝時間までずっと迎えを待ち、最後は泣きながら部屋に戻る姿は忘れられません。今は施設入所の子以外は近隣の自宅からバスで通ってきていますので事情が少し違いますが、やはり「お休み」は子どもたちにとって楽しみな物です。

当たり前ですが過ごし方は外出か自宅内かに分かれます。家族で出かける事もちろん多いようですが、福祉サービスを利用し、ヘルパーさんとの外出を楽しむ子も多いようです。この場合好きなことがはっきりしていると、その子にとっても家族を含み外出を支援する側にとっても充実した時間が過ごせます。ドライブ、駅に電車を見に行く、公園で遊んだり冬はそり遊び、プール、乗馬教室などなど。ただ、そのお子さんが望んでいない過ごし方を一方的に提供されていないかどうかは考える必要があると思います。育ちの段階によってまたそのお子さんの特性によって外出自体に意味合いを感じられない事もあります。週末だからと言って好きなことばかりさせる必要はないのではという考え方もあるとは思います。もちろん生活の中では「つきあい」として家族の用事に合わせる必要が出てくる場合等もあります。ただ、将来の「自立」を視野にいれるのならば、「自分で決め自分で選択する」事を自分の為に使える時間の中で「練習」する必要もあるでしょう。これしかしないと言った決まったパターンを好む場合もありますが、突発的なことで中止しなければいけない事もありますので、複数から選択できるのが理想です。将来のために楽しめそうな物を増やしていくのも大切なことです。もちろん新しいこともやれば好きになるというものでもありませんので周囲が提供できる物をリサーチするという視点の「増やす」が中心になるとは思います。
家の中での過ごし方も同様に思います。ただ、「家でのんびり」と言っても空白の時間が苦手なお子さんもいます。以前に聞いた講演の中で自閉症の方と一般の方のリラックスの違いについて聞いた話があります。何もしない時と軽作業をしている時の脳波の違いを調べたところ、一般の方は何もしていない時にリラックスしている波形が出たのに対し、自閉症の方は軽作業をしている時の方がリラックスしている波形が出ているデータが得られたという話でした。データの信憑性の話は別として、何をすればよいかわからない時の方が不安を感じているのかもしれないという示唆を与えてくれます。情動行動や感覚の自己刺激的な行動は何もしていない時の方が多く出ますし、何か問題となる行動が起きる時もすることが決まっていない時の方が体験的に多く見られると思います。家庭内でも落ち着いて過ごしてもらえるように「自立課題」と呼ばれる自分一人の力でできるパズルや簡単な仕分けのような活動を数種類用意して組み合わせ自宅での過ごし方にルーティンで組み入れているというお話しも多く聞きます。

週末だけの話ではなく学校の中でも「休み時間」という自分のために使える時間があります。雨天でブランコや夏にそり遊びがしたいと言われてもお互い困りますので、この時間でできる事を提示しその中で選んでもらう事は本校でも広く行われています。以前勤めていた所では「休み時間は次の学習の準備の時間だから、授業が始まるまで着席して待つべきだ。」という意見も聞いたことがありますが、僕自身は休み時間は待機時間ではなく指導時間と捉えていますので授業の開始に支障がない限り、「余暇」の指導をしていきたいと考えています。彼らが少しでも自分の時間を有意義に自分で使えるように。

まあ、僕はと言うと子どもができてからというもの、冬場には必ず行っていた大好きなスノーボードにほとんど行かなくなりました。以前、研修が趣味といったら管理職に「君は不健全だ」と言われましたし子育てが趣味と言えば違う気もしますし。僕の余暇はあまり自慢できませんね。妻からは「たまにはボードでも行ってきたら」と言ってもらえますが、でもちゃんと「自己選択」してるんですよね。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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