ここ数日間、期末考査を前にした貴重な時間ということもあるのだろうが、生徒たちの目の輝きに真剣さが増し、質問の切れ味がよくなってきている。「わかろう」とする気持ちにスイッチが入り、ココロとカラダが一気に「学び」の体勢をつくりを始めたようだ。
さて、先日改めて読み返した『結果をきちんと出せる人の習慣術』(菅原圭:著、KAWADE夢新書)に、劇団四季のことに触れた部分があった。
「CATS」はじめ「オペラ座の怪人」、「ライオンキング」など、ロングヒットを続ける演目をいくつも持っている、まさに《結果》を出し続ける劇団だということで、その理由について分析している。
あらかじめロングランを予想できれば、装置や衣装などに思い切った投資ができる。そうすれば、舞台はいっそう華やかにドラマティックになり、それがまた、観客を呼び続ける力になる。だが、ロングラン興行を実現するのは、頭で考えるほど容易なものではない。
劇団四季を率いる浅利慶太氏は戦略を考え抜いた。その戦略の核になっているのが、ひとりのスターを育てるのではなく、劇団員全員がレベルアップしていくという方針だった。
稽古段階では、主役はそれぞれ4、5人の俳優が同じ密度で稽古をしている。本番の直前まで、誰が主役として舞台を踏めるかはわからない。ほとんどの役が、こうしたシステムになっているというのだ。
「四季のモットーは『慣れ・だれ・崩れ・去れ』なんです。どんなことでも長く続けていると、どうしても慣れ・だれ・崩れが出てきます。それをなくすためには、劇団員のあいだでもたえず切磋琢磨させる環境づくりをしています。ダブル、トリプルキャストは俳優のケガや病気などのアクシデントに備える意味もありますが、同時に、役者同士を競わせ、つねに質の高い舞台を維持するためのシステムなのです」
浅利さんは、テレビ番組でこう語っている。実際、公演中でも、役者を入れ替えるということはしょっちゅうあるというから、気が抜けない。
劇団四季では、舞台裏を支える技術や営業のレベルアップにも力を注いできているそうだ。個人の成長とともに、個人が集合した組織全体のレベルアップをすすめていく。こうしてやってきた結果、劇団四季のミュージカルはいまや、世界のどこに出してもヒケをとらないレベルにアップしてきている。
ボク自身も常に思う。
勉強は「集団競技」だ、と。
自分ひとりだけでなく、クラスのみんなが、学校全体が「賢く」なってはじめて自分のレベルも「確かなもの」として上がっていく・・・。
そういう意味で解釈すれば、子どもたちの勉強に対する姿勢になるだろうし、役者を教員に置き換えて、学校の組織マネジメントの方法論としても捉えることができるだろう。

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
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