2011.12.01
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量と質

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

  先日、退職された校長先生のお話を聞く機会がありました。現在は大学で教鞭を執られている方で、非常に幅広い分野に知識を持たれており、お話自体も大変興味深い物でした。
 今回はその中で話題に上がったことで一つ、色々と考えさせられた事があります。

 それは、特別支援学校の教員の数が多すぎるのではないかと言う内容でした。
 教員が多いことの弊害として挙げられていたのが、教員同士の人間関係に余計な時間と力を裂いてしまうことと、子どもの自主性や成長の機会を阻害してしまうことを指摘されていました。前者の点については苦笑いするしかないのですが、後者については思い当たる点がいくつかあります。人的余裕があればそれだけ良い指導ができるように思われるかも知れませんが、「質」自体が上がらないかぎり「量」が増えても意味はないと思います。目が行き届きすぎる分、子どもの行動に先回りをして言葉を掛けたり指示を出したり、手を引いたりなども起こりがちになります。

 特別支援学校の教員の配置は基準によって決められていますが、かなり大まかに言うと日常の指導においては子ども6人に対し2人の教員配置での運用が一般的でしょうか。教員と共に活動することを必要とするお子さんもいます。教員の中にある多忙感からも単純に指導に係る人数を減らすことには抵抗を感じるかもしれません。現在の僕の指導学級も6名に対し2名で指導を行っています。そこを一人でと言うとできないこともないなとは思います。しかしトイレの指導で1対1で個室に入ってしまうと教室内で、もしトラブルがあったとしても対応できませんので、もう一人いてくれた方が安心ではあります。女児の指導も同性でなければできないこともあります。あとは休み時間や給食時間にどうしても個別対応が必要な事が重なる時がありますね。

 ただ、人数がどうこうとは別に(もちろんトイレが給食がと言うのは本筋から外れた話で)問われているのは人が付くことで見えなくなってしまっているその子の教育的課題であったり、人に依存することで教育の質の向上が図られなくなっているのではないかと言うことであると思います。

 数年前、特別支援教育支援員の配置が始まり、活用の方法についての問い合わせがいくつかありました。その時に上記と似たような懸念を感じました。もちろん通常学級において40名近い子ども達一人ひとりに丁寧に対応していくことはとても大切なことなので、支援員は運営上とても大きな力になります。ただ、問題を起こさないために張り付くように何でも先回りして手を貸したり、対応を支援員一人に任せてしまったりすることで弊害が起こるのではないかと言うことを心配しました。相談をいただいた各教委、各学校ともその点に関しては懸念に終わった感はありますが、活用を誤ってしまうとせっかくの人材も教育効果の薄い物になってしまうでしょう。

 本校は学級数も多いため、定数ぎりぎりの配置で対応していますので、郡部の学校に比べて教員一人あたりが対応する人数も比較的多い状況にあります。比べてしまうとどうしても職員の間に多忙感も出てくる物と思います。人手が足りない分子供の自由な活動より安全確保が優先される事もありますので、「人が多い」と言われることに素直に首を縦に振れない事もあるでしょう。ただ、質を求めずに量に頼ること、つまりは人手があれば何とかなるといった考えは本当にそうなのか僕自身も含めて見つめ直す必要があります。

 ただ、自分の子供に関しては話が別です(笑)。人数が少ない方が目をかけてもらえるという期待を持てますから。様々な経験年数、力量の先生方に子供を預ける身としては、よく見えない質よりは、はっきりわかる量を求めた方が安心感は持てますね。お恥ずかしい限りです。
 

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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