2011.11.17
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学芸会・学習発表会・文化祭・学校祭

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 10月から11月にかけて、あちこちで秋の代表的行事のうち、学芸会や学習発表会等がおこなわれています。北海道では運動会は6月頃に行うのが一般的ですので、いわゆる「学芸的行事」が秋の最大の行事です。先日、僕の職場でも、小学部、中学部では「学習発表会」高等部では「高等部祭」が行われました。11月が全国的にも多いようですね。息子の小学校では、少し遅めで12月に「学習発表会」が行われるようです。

さて、この学芸的行事ですが、学芸会・学習発表会・文化祭・学校祭など様々な名称や内容で行われています。同じ道内でも様々です。初任地では、小中学部合同で「学芸会」が行われ、内容は「劇」や「器楽演奏」でした。地域の小学校でも「学芸会」が行われていたのが大きな理由だったのでしょう。僕の育った町は「学習発表会」が一般的でした。当時は「学芸会」とは本州の特定の地域で行われている物と思っていたくらいでしたので、軽い驚きもありました。当時は中学部でも「学芸会」だったことに違和感を覚えました。中学生=文化祭のイメージが強かったからかもしれません。
「学芸的行事」は学習指導要領の中では「特別活動」の「学校行事」に規定され「学校生活に秩序と変化を与え,集団への所属感を深め,学校生活の充実と発展に資する体験的な活動」のうち「平素の学習活動の成果を総合的に生かし、その向上の意欲を一層高めるような活動を行うこと」とされています。包括的な規定ですので名称や内容はそれぞれということです。学校行事自体が指導要領に規定されたのは1970年頃ですが、学芸会等は、古くは明治期から行われていましたので、各校の歴史の流れの中で培われてきた物が学校行事として引き継がれている物なのだと思います。 

本校のような特別支援学校の子どもたちにとっても、平素の学習活動の成果を発表する場として学芸的行事は設定されています。親しい人が見に来てくれる事に意欲を見せてくれるお子さんもいますが、雑多な音や視覚刺激で満たされるステージ上での活動を苦手とするお子さんも多いのが事実です。ですので終了までの見通しを持たせたり、具体的でわかりやすい内容にしたり、活動をなるべく短時間で済むように設定したりの工夫で過度の負担を子どもたちにかけないような配慮が必要となります。
過去には、それまでの指導として配慮がないまま無理に集団行動への適応を求めるあまり、発表会も含め学校行事自体が「恐怖の対象」となってしまい、その時期になると体育館に近づくことさえ難しかったお子さんにも出会いました。行事は規律や規範の中で活動できるのが理想ですが、そのお子さんの「育ちの段階」もありますので一律に求める事は、やはり難しいと思います。
一人ひとりの学習の成果やできることも違いますので、発表の内容はストーリー仕立ての進行の中で個別に設定された活動(見せ場)を盛り込んでいっています。普段の学習の成果ならば参観日にじっくりと見ていただけますので、お子さんによっては数十秒という短時間ではありますが保護者の方には我が子のステージ上の姿という期待感と緊張感を味わって頂いています。教育活動ではありますが子どもたちによる保護者に喜んでもらうための行事という意味合いも含んでいますので(ただし、子どもたちの「育ち」にそぐわない過度の負担を強いる物であっては元も子もないとは思いますが)。ステージ上で観衆を前にパフォーマンスを行えることが、卒後の生活の選択肢を増やしたり働くことに直結しずらい物でもありますので、何をするかではなく何を育てたいかは「その子にとって」をよく考えて行かねばならないなと思っています。

さて、先日、息子が小学校から学習発表会に関するプリントと劇の台本を持って帰ってきました。プリントの中には「役を決めるため、台本を読んで何の役をやりたいか、おうちの方とよく話し合って決めて来て下さい。」との旨の一文があり、驚きました。
そういう時代なのか保護者の要望が強い地域がらなのか、または1年生ですので自分の希望を出すための思考の整理を手伝ってもらうためなのか。最後は複数の希望の中から重なった物について学級内のオーディションで決めるようです。我が子は本人の希望が「にゃー」が台詞のネコなどの端役のみでしたのでオーディションは無いようですが、主役やお姫様などはやはり人気が集中したようですね。
僕の幼稚園時代もアンパンマンのジャムおじさんを5人ほどで演じた思い出がありますし、担任の先生主導で配役が決まった小学校時代の思い出もあります。幼稚園の時から劇の台詞を覚えるのが得意だった息子には学校生活で数少ない活躍のチャンスなのですが、台詞の多い主役などをさせたい気持ちもありました。しかし、望んでいない物をこちらから勧めるのは夫婦とも抵抗感がありましたので、今回は息子の希望のみで決めさせ学校に向かわせましたが、そうではないお子さんもいるのでしょうか。僕も来月には我が子のステージ上の姿という期待感と緊張感を味わってきます。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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