前回のつれづれ日誌の最後に、「今年度の学級経営方針の第一である『裏のねらいと表のねらいを持って、子どもと子どもたちを育てる』」と記しました。この「裏のねらいと表のねらい」は、日常的には、授業づくりと学級づくりの一体化を意味しています。
たとえば、授業には授業のねらいがあります。それを達成するような授業構成を考えるのは、当たり前です。しかし、これだけでは表のねらいが達成されるだけで、教育の目的である「人格の完成」に向かうかどうかは疑問です。
そこで、もう一つのねらい=裏のねらいを持つことが大事ではないかと考えています。つまり、指導者として、授業展開の中に、学級づくり(人間関係づくり)に関わるねらい(裏のねらい)を仕組み、子どもを育てるようにしなければならないと考えているのです。
教育の目的(人格の完成)を考えると、授業が中心の学校では、「裏のねらいを持って、表のねらいを達成する」べきではないでしょうか。ですから、私は、裏を先にして、『裏のねらいと表のねらいを持って、子ども(個)と子どもたち(集団)を育てる』ような実践を、日常的に行っています。
では、具体的な実践例を紹介します。
先日、3年生の社会科で、「地域の人々の生産や販売の仕事について、見学したり調査したりして調べ、それらの仕事に携わっている人々の工夫を考えるようにする。」ために、スーパーマーケットを見学しました。
店長さんに、店内を案内してもらいながら、そのレイアウトや売り場の工夫などを話してもらいました。続いて、バックヤードを見学して、スーパーマーケットを運営するための裏方の仕事も見せてもらいました。最後に、自分の疑問やもっと調べたいことを自由見学で、調べたり聞いたりして、見学活動は終わりになりました。
この見学を元に、販売に関わっている人々の工夫が分かり、自分の生活との関連に気づければ、社会科としてのねらいは達成できます。
一方、裏のねらいを達成するために、「店長さんへお礼の手紙」を書くことにしました。そこには、社会科のねらいが達成できたお礼とともに、相手(店長さんや店員さん)を思いやり、感謝する気持ちが表されていました。自分のこと(見学ができたこと)だけでなく、相手意識を育てるチャンスなのです。
自分の目的ばかりに目がいってしまうと、見学中に店内を走ったり、通路の真ん中で立ち止まったりしてしまいます。また、大声で話すなど、周りが見えなくなってしまいます。それを、その都度、注意するような指導をしていては、子どもは育たないと考えました。
そこで、裏のねらいを持った事前指導しておけば、不適切な行動はなくなり、自然にそのねらいが達成できるのです。ここでは、スーパーマーケットは何のためにあるのかという、根本・本質・源を明確にしておきました。つまり、「スーパーマーケットは、買い物をする人のため」という一点をしっかり確認しておけば、子どもたちは自ずと自覚するようになるのです。
「見学をさせていただいている」という感謝と遠慮の意識を持たせることで、子どもの態度や行動が大きく変わってくるのです。子どもたちが書いたお礼の手紙には、発見・驚き・感想のほかに、次のような文章がありました。
・店員さんはあんなに集中しているのに、え顔でやっているのが勉強になりました。
・お店にいる人たち(店員さん)が、あんなにすばやくてびっくりしました。
・店長さんはかぜをひいているのに、商品の工夫やバックヤードにあんないしてくださってありがとうございます。
・店長さんのわかりやすいせつめいで、社会の勉強になりました。
・店長さんがていねいに説明してくれたので、私はたくさんのことを知りました。
今後は、相手を思い、感じたことを自分の生活に活かせるように仕組んでいくことが、これからの担任の仕事だと考えています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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