さっき、職員室で交わされた、きりりと鼻筋の通った男性教員N氏とM氏の会話。
「何か、買ってきましょうか?」
「う~ん、そやなぁ。あんパン・・・じゃなくて、エクレアとシュークリーム!!」
仕事でバタバタしていて、この分じゃどうも深夜までかかりそうだと悟ったN先生。追加資料をアパートまで取りに戻るついでに、晩ご飯を買ってくるので、ちょっと外に出てくるという。で、それならばついでにと、同じように職員室に残ってる”セコムラー”(いつも夜遅くまで学校に残っているため、日常的に機械警備のセットをして帰るところから、こう呼ばれるようになった)男性教員3名に声をかけ、一緒に何か買ってこようかと気を遣ってくれた。
僕を含め2人は、「ううん、いいから気にしないで・・・」。残る1人、N先生の向かいに座ってるM先生が、おもむろに言ったセリフが冒頭の返事。
ラーメンとかおにぎり・・・なら、別に気も留めなかっただろうし、スッと流したに違いない。ところが「あんパン」ならぬ、「エクレアとシュークリーム」ときたもんだから、思わず「え~???」って。
いつも、ストイックに物事に向き合うM先生と、どこでどう結びつくのか、その甘くてとろけるようなイメージ・・・。シューの香ばしさにバニラビーンズの甘香、そしてチョコレートのコク・・・。どこから見ても、おおよそ似つかわしくない「ミスマッチ感」に、思わず笑ってしまった。
でも・・・、そこがいいんだ。M先生の魅力は、実はその「意外さ」にあるのかも。
どんな相手でもそうだが、予想しない反応が返ってきたりすると、驚きと同時に、新鮮な感動がココロを通り抜けていく。「えっ? こんな一面もあったのか・・・」。彼女なら、改めて惚れ直すのは、決まってこういう「意外さ」に触れたときだ。
さっきのシーンは、まさにそれと同じ感覚。
「う~ん、オ・ト・コ・マ・エ じゃん!!」
職員室の空気が一気に和んだ。
毎日、子どもたちと接しながら感じる、喜びや悩み、不安・・・。そういったものを共有しつつ、お互いに励まし合い、支え合って頑張る先生たち。夜9時半を回っても、延々と熱く、真剣に語り合う姿に、いつしか疲れも忘れてしまう。
「この調子だと、今日中には終わんないかも・・・な」
語り合った言葉、積み重ねた時間、揺れたココロ、流した涙・・・。びっしりと書き込まれた指導ノートのページが埋まるたびに、また一つ、教師としての経験値が、厚みと深みを増していく。
目の前の現実から逃げるな。
カッコつけず、素直に、正直に、現実と対峙せよ。
真の学びは、そこにある!!

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
同じテーマの執筆者
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
「教育エッセイ」の最新記事
