ボランティアは信頼関係づくりから
前回の続き「被災地ボランティアを体験して」です。
私が参加したのは「栃木ボランティアネットワーク」という団体です。今回は20代の若者と60代の先輩、そして40代の私三人。一台の車に乗り込み岩手県一関の宿泊施設に向かいました。そこでは現地駐在員の方が待っていてくださり合計4名でチームを組みました。と言っても4人だけで活動したわけではありません。
朝8時30分、気仙沼市唐桑半島 鮪立(しびたち)地区の集合場所には、総勢30名ほどの人が集まっていました。私たちを含めて4団体が集結。夏休み中の大学生が多数を占めていましたが、中には小中学生の子供を連れた家族や外国人の方もいました。
リーダー格の若者の進行で、準備運動、自己紹介、作業場所と作業内容の確認をしました。中でも感心したのは諸注意でした。「一番大切なのは、声かけです。重いものを手渡すときは『重いです。』後ろを通る時は『後ろ通ります。』など必ず声かけをしてください。けがをすると、地元の人がボランティアを頼みづらくなってしまいます。」
なるほど。後で聞いたのですが、震災直後、ボランティアに入った人たちの最初の仕事は、地元の人たちとの信頼関係づくりだったそうです。地元の人たちから見れば、ボランティアはよそ者です。勝手に作業することはできません。自治会の集まりに何度も足を運び、少しづつ仕事をもらい、その仕事ぶりから信頼を得てきたそうです。私がボランティア活動に参加できたのはそのような苦労の積み重ねがあったからでした。
ボランティアに肩書はいらない
各団体のみなさんの作業着の胸には、ガムテープをちぎって貼り付けた名札が付いていました。マジックで書いたその名前は平仮名かカタカナで書かれたニックネームです。ある団体などは、誰に対しても「さん」などの敬語を付けずに呼び合うそうです。ボランティアは老若男女を問わず肩書はいらない。これは私にとって、心地よいというか一個人に戻ったという感覚が生まれました。私は日々の多忙の中で24時間「教師」という感覚で生活していたのかもしれません。
見知らぬ人たちとの語り合いのすばらしさ
宿泊施設では、私たちのほかにもう一つの団体が泊っていました。大学生の皆さん5名と世話役の女性1名計6名の団体で、仮設住宅を回り「足湯」のボランティアをしていたそうです。二日目の夜、その方たちとミーティングをしました。ボランティアに参加した理由やそれぞれ感じたことなどを伝えあった経験は本当にすばらしいものでした。
1時間の予定を大幅に超えて話は深まりました。 中でも福島県出身の女子大生からの投げかけ、「みなさんに聞いてみたかったのですが、みなさんは福島のことをどう思っていますか。」
みんなすぐには答えが見つからず、ただその人のふるさとへの思いを聞いてうなづくばかりでした。「今の若者は」という若者のマイナス面を嘆く言い方は古今東西変わらないものがありますが、こうして接してみるといやいや若者は大したものです。
終わってみて、「ボランティアをした」というより「ボランティアをさせていただいた」というほうが自分の気持ちに合っているように思えました。
(写真は、作業をした気仙沼市唐桑半島の鮪立地区です。)

鷺嶋 優一(さぎしま ゆういち)
栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
この春、勤務校が変わりました。異動したての新鮮な気持ちをダイレクトにつづりたいと思います。そして「ICTと幸せ」についても小学校教育の視点から考えます。
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