9月10日(土)から、本校の中学1年生が、国際宇宙ステーションで長期間保管されたのち、日本に持ち帰られた「宇宙種」の栽培実験を行っています。
理系強化に取り組む本校では、子どもたちに宇宙への夢と関心を向けるきっかけになればと、最先端科学教育プログラムを提供している会社の「宇宙教育プロジェクト」に参加。総合学習の時間を使って宇宙種と地球上の種を同じ環境で栽培し、発芽から生育、収穫までの違いを詳しく観察することにしました。
栽培は、野山でよく見られるマメ科植物のミヤコグサで行われ、実験に使う宇宙種子は2008年7月、スペースシャトルで国際宇宙ステーションに運ばれ、日本の宇宙実験棟「きぼう」内で8カ月間保存されたあと、翌年8月に日本に帰ってきたもので、地上の1000倍もの宇宙放射線を浴び、生物の設計図であるDNAに何らかの変化が起きている可能性があります。
実験初日となった10日(土)は、講師となる生命化学の博士2名が来校。まずは実験の目的や内容、取り組み方などの説明がありました。山崎直子さんからのビデオメッセージが流れ始めると、子どもたちから歓声が上がり、実験への期待感がどんどん高まっていきます。
プロジェクト任命書の授与に続き、宇宙種子を渡され、いよいよ実験のスタートです。見た目は全く変わらない宇宙種と地球種。飛び散らないよう、混ざらないように注意しながら、発芽を促すための前処理をします。種子の表面をサンドペーパーで擦り、表面に傷をつけ、水とともにマイクロチューブに入れ、1時間ほど吸水させました。
その間を利用して、DNAの働きについて説明があり、実際にブロッコリーからDNAを取り出す実験を行いました。乳鉢ですりつぶし、水を加え・・・。そうこうするうちに、先生の声が聞こえてきます。「試験管の上の方に、白い綿のようなものが浮かんでるでしょ。それがDNAなんだよ」。「え~っ、こんなに簡単にDNAが見られるの!」「スゴイ!」 生徒たちの活き活きした反応に時間の経つのを忘れてしまいます。
さらに、放射線のDNAへの影響を確認するために、霧箱の実験もあわせて行いました。ちょっぴり神秘的な雰囲気に、みんな興味津々です。この間、ずっと休憩なし。まるで大学の研究室で実験をしているような感じで、時間が流れていきました。
さて、最後にいよいよ前処理をした種子を播きます。一人ずつ、ピンセットで種子をつかみ、連結ポットに播いていきます。宇宙種と地球種を間違えないように、やさしく、丁寧に・・・。全員が播き終わったら、気温と照明が一定に保たれた人工気象器の中にポットを入れ、栽培実験がスタートしました。
このあと、2日に一回、定量の水やりを続け、約2週間が経ちました。現在、順調に発芽し、5~6枚の葉が出てきています。
この後、56日目あたりになると花が咲き終えるとのことなので、さやができはじめた日から水やりを止め、種子が採れるまで栽培を続けていきます。この間およそ91日。途中、一週間ごとに葉の数、茎の長さ、開花日、さやの数などを観察記録にまとめ、宇宙種と地球種に違いがあるかを調べていきます。
生徒たちは、ふだんの授業では経験できない取り組みに関心を寄せ、どんな結果が出るのか興味深そうに実験に取り組んでいます。 全国28カ所で行われた2009年度の実験では、宇宙種に生育不良を起こすものが多くあったといわれています。
今回の実験結果は最終的に本プログラム提供会社に報告され、全国で取り組まれている同様の実験データとの照合が行われます。

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
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