9月3日と4日に札幌で、アメリカのノースカロライナ大学のゲーリー・メジボフ教授を招いての自閉症セミナーが行われました。セミナーでの細かい内容の記載は有料のセミナーでしたので差し控えさせて頂きますが、控室でお話しを伺った時の話題を書かせて頂きます。
メジボフ教授は自閉症教育に携わっている方なら皆さんご存じのノースカロライナ州で行われている自閉症を持つ方に提供されるプログラム「TEACCH」の第一人者です。
僕はセミナーでの代表質問の役に当たっていましたので、他の質問者の方と共にレセプションパーティーと昼食をご一緒する機会を頂きました。雑談(もちろん通訳の方を通してですが)の時間もありましたが著名な方でしたので緊張してしまい、なかなか何を話して良い物か困りました。
講演の内容から質問をすることになっていましたが、時間の制約から一つに絞ることにし、会場では出せない質問を控室でさせて頂きました。
セミナーの中で、教授の方から最新の自閉症、脳科学研究に関する話題がありました。自閉症発症のリスクや予防法としての情報もいただきましたが、研究発表された段階で今後も検証は必要であるということでした。数年前、札幌で「自閉症が治る」とのふれこみで大規模なセミナーが開催されたことを思い出しました(セミナー自体は無料ですが、セミナー後に希望者には高額な薬剤の斡旋があるというものでした)。ネット上にも真偽は別として様々な情報が溢れています。情報リテラシーが問われる部分ですが、過去に聞いた「治ると言われれば何でも飛びつく」という保護者の方の言葉も心情的には理解できる部分はあります。「TEACCH」では根拠に基づき実証された療法や教育法等で構成するという考えに基づいていますのでメジボフ教授に、前述したようなある特定の療法などの情報について問い合わせがあった時に支援者として留意しなければいけない部分について伺いました。
まずはしっかりした根拠を持つ物かどうかとしての視点での情報提供に留め、それでも利用したいという申し出があれば、支援者はそれ以上の解釈は伝えられないし伝えるべきでもないとのことでした。しかし、ある療法の中には他の疾患で用いられている物もあり、広く名前の知られた物もあります。ただし強い副作用を持つ物(中には死亡例がある物も)や効果が副作用のリスクに見合わない物もあるとのこと。教授自身は自閉症以外の分野の信頼できる医師などに問い合わせているとのことでした。リスクのある物に関しては、リスクがあることを伝え、その上で保護者に選んでもらうしかないそうです。中にはリスクもない代わりに効果もほとんど認められない物もあります。実感としての効果は個人差もある物なので「効果がない」ことよりも「リスクがある」事を伝えることのほうにより注目する必要があるとのこと。
僕自信も新しい情報には強く引きつけられ、謳われる効果に根拠を問うことなく感心してしまう事があります。新しく得た知識はそれを使ってみたくなり、新しい物差しを用いてとにかく当てはめて考えようとすることもあります。ただ「治ると言われれば何でも飛びつく」という心情が「つけこむ隙」にならないよう願いながら、僕自身のリテラシーも高められればと思っています。
ちなみにセミナーで教授から、あるビタミン(コンビニでも売っているサプリです。)を妊娠3か月まえから意識して摂取することで自閉症の発症リスクが下がるという紹介がありました。こちらは、かなり信頼度が高い情報とのこと。さて、どうなんでしょうか。
青木 一真(あおき かずま)
北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。
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