2011.08.25
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外部との連携~札幌市自閉症・発達障がい支援センターさんの事業から

北海道札幌養護学校 教諭 青木 一真

 本校では、いよいよ先週17日から2学期が始まりました。朝晩とも20℃を下回る気温となり、窓を開けっ放しで寝ていると寒さで目が覚める事もしばしば。札幌はお盆を過ぎるとぐっと秋を感じさせる気候となります。
 
 今回は学校と外部との連携について書かせて頂きます。
 特別支援教育はつながりの教育。とは言え、日々の授業準備や学級事務に追われていると学校のことだけで手一杯になってしまうことも多いのが実情と思います。
 僕の学級も満足な連携が図れているとは言えません。もちろん連携することが目的ではなく、子どもたちに還元される物でなければいけませんが。

 今年度、「札幌市自閉症・発達障がい支援センター」の「直接支援モデル事業」という物に僕のクラスの子がお世話になることになりました。どのような物か簡単に説明すると、対象児のアセスメントからどのような手立てを組んで支援を行えば良いか検討し、支援センター職員が実際に対象児の療育を行って、保護者・学校に結果を還元するという物です。ちなみに「自閉症・発達障がい支援センター」は各都道府県および政令指定都市に設置され、当事者や保護者からの相談を受けたり、自閉症(発達障がい)者の支援を行う事業所や学校などに対する支援・助言を行っている所です。
 さて、実際の事業の方ですが、まずは、学校と保護者対象にニーズの把握と実態の情報収集を行います。センターで作成する対象児の計画書に文章でその子の様子やこちら側のニーズを記入します。次にセンターの職員さん(所長さんにも来て頂きました)が数名来校され学校での生活の様子を見学されていきました。保護者引率の下、センターでの発達検査(PEP3というものを使いました)が行われ、その後週1回、センターでの療育が行われます。療育は平日の放課後であり、あいにくその曜日が会議日であったため夏休み前に見学に行くことができませんでしたが、療育での様子は写真付きの報告書で保護者の方経由で知ることができました。夏休みに入りクラス外の職員を誘い療育の様子の見学と療育後の職員の反省会に参加させて頂きました。事業は今月11日をもって無事終了しました。来週にはセンターの職員さんが来校し事業の報告をして頂くことになっています。

 療育の中ではお子さんに対し、確実に理解でき自立的な活動を促せる物を提供して頂けました。学校での生活は今までの5年生分の経験もあり「なんとなく動けている」物が多いことに気づかされました。もちろん自閉症をもつお子さんは元々学習したことの般化が難しい事が多い特徴があります。しかし、学校ではできていると思っていた「靴を下駄箱に入れる」ということも、場所や下駄箱自体が違うことで全くできなかったり、学校で用意している程度の支援ツールや環境では全く活動に移れなかった事が報告から解りました。このようなことから「ああ、僕は子どもたちに『学校での活動の仕方』しか教えていないのかも」と気づかせていただきました。他にも自分が目指していた部分でベクトルが同じことなど自らの指導にさらに裏付けをいただいた点もありましたが、学校だけでは気づけない、見えない部分を見せて頂き感謝しています。

 今回、事業に参加することができたのは、保護者の方から申し出があり、なおかつ僕自身が興味があったからだと思います。たまたま色々な方との付き合いもあり一歩を踏み出しやすかったこともあるのですが、実は今回の事業参加に関し僕自身、裏の目的も持っていました。外部との連携のツールにと言うことです。
 子どもを中心に据え、子どもたちを支える教育・福祉・医療・行政サービスといった各機関が情報や目標を共有しそれぞれの役割を果たすのが本来であり、つながりを記録し共有化するツールとして整備されるのが「個別の教育支援計画」です。「“教育”支援計画」ですので並列であるはずの機関の中でも学校の存在が際だちます。もちろん学齢期のお子さんに関しては学校の存在や責任は大きい物です。ただ学校での生活はその子の一部分であることも忘れてはいけないと思います。今回の事業の対象になったお子さんは、学校以外にヘルパーさんや児童デイサービスのお世話になっています。今回、出して頂く報告が学校での指導方針をそのまま外部にお願いするような形ではなく、共通の手立てや目標をより立てやすいツールになってくれればと考えています。

青木 一真(あおき かずま)

北海道札幌養護学校 教諭
前任校では特別支援教育コーディネーターを3年間務めさせていただきました。昨年度、異動と共に久しぶりの学級担任に戻り右往左往。良い教育を迷いつつ模索する日々です。

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