2011.09.02
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夏休み日記

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

キナイフィヨルドと氷河 アラスカ鉄道 グリズリーの親子

 私は教員になった当時から環境(教育)に感心を持ち、ホタルを通して自然を考えたり、身近な自然を観察することで環境への興味関心を高めたりする活動をしてきました。最近は、「本当の自然」に触れることが、人間の感性を刺激することになり、人間の本能を呼び覚ましてくれるのではないかと考えるようになりました。もちろん、ここで言う「本能」とは、「人間も自然の一員である」という意識のことを指します。

 日本に生まれ、日本に育った私は、日本の自然が大好きです。南北に細長い日本は、四季を持ち、様々な自然に恵まれていることは言うまでもありません。私自身、北は北海道から、南は沖縄まで行ったことはありますが、ただ行ったことがあるというだけで、本当のすばらしさを知っているとは言えません。しかし、出かける度に、日本の、そして自然のすばらしさを五感で感じ、自分の感性がリフレッシュするのを感じてきました。

 今年の夏、私はアラスカに出かけてきました。日本もすばらしい自然がありますが、世界には自分の想像を超える自然があるのではないか、そして、それを映像ではなく、自分の目で見ることができれば、自分に対して大いなる刺激になるのではないかと思ったからでした。

 アラスカへはアンカレジへの直行便を使ったため、7時間余りで到着しました(定期便はないため、アメリカ本土経由だと15時間程度かかる)。8月のアラスカは、日本の梅雨のような天候で雨が多いそうで、到着時も小雨模様でした。最高気温は20度を少し越える程度で、湿度が低いので快適でした。

 2日目にアンカレジから100キロ余り南のスワードという町に移動して、そこでキナイ国立公園のフィヨルドクルーズに出かけました。「フィヨルド」という言葉は、社会科の教科書で覚え、ノルウェーが有名だと暗記した言葉です。場所は違いますが、本物のフィヨルドが見られると言うことで、興奮を覚えていました。ちなみに、フィヨルドは、氷河の浸食作用によってできた複雑な地形の湾や入り江のことを指します。
 実際に見てみると、一見すると、日本のリアス式海岸(沈水海岸)に似ているようにも思えます。しかし、規模が違います。そして、断崖が多く見られ、何よりも今も氷河が岩山や大地を削っている様子が見られるのです。
 なぜ、「今も削っている」と言えるのでしょうか。このことは、アラカスの川の色にヒントがあったのです。もちろん、フィヨルドに流れ込む滝のような川の色にも共通していました。その色は灰色なのです。ずっと疑問に思っていましたが、これは、氷河が岩石や岩盤を削ってできた「シルト」(砂より小さく泥より粗い砕屑物)が流れ込んでいるためだと知りました。そういえば、アンカレジのダウンタウンにある入り江を見た時、海岸が灰色の泥がたまったように見え、疑問に思ったこととつながりました。正に、今も氷河が地表を削り続けているということを実感した瞬間でした。
 さて、その氷河ですが、夏と言うこともあり、氷河が海面に崩落する様子は見られませんでした。しかし、クルーズ船からは、真夏でもたくさんの氷河を確認することができました。
 天候がよくないことで、何種類もの野生の海洋性動物に出会うことができました。クルーズ船と一緒に泳ぐシャチや潮を吹くクジラ、岩場で休む海鳥やアザラシも見ることができました。水族館で見るのとはまったく異なる印象でした。
 このキナイフィヨルドでは、氷河地形とともに、二つの地殻プレートがぶつかり合っているために、余計にダイナミックな景観を作り出しているとのことでした(写真 左)。

 4日目には、北米大陸最北を走るアラスカ鉄道の展望車に乗って、雄大な景色を眺めながら、4時間余りをかけてデナリ国立公園へと向かいました(写真 中)。

 デナリ国立公園は、北米最高峰のマッキンリー山6194mを擁し、広さは四国よりも一回り大きいのです。ここでは、野生動物や高山植物を観察するワイルドライフツアーに参加してきました。
 朝5時にバスで出発する約6時間のツアーです。出発してしばらくはタイガ(針葉樹林帯)の森で、ムースという鹿の一種が見られました。川によって浸食されたV字谷や氷河によって削られたU字谷が出現してきます。その辺りで、グリズリーベアーの親子を見かけることができました(写真 右)。川の近くで仲よく歩いていました。こうした姿を見かけるのは、珍しいとのことでした。ほかにも、オオカミやライチョウ、ナキウサギを見ることができました。曇り空で時々晴れたり、雨が降ったりして、一時は雪も降ってきました。目まぐるしい天候でしたが、多くの野生動物に出会うことができ、幸運でした。
 唯一、残念なことは、マッキンリー山を見ることができなかったことです。
 この時期のアラスカは、北緯60度を超えることもあり、夜中の12時になっても、夕方のような雰囲気なのです。慣れないと、本当に不思議な感覚で、時計を信じられない毎日を送りました。

 このように、日本で日常見る風景とはまったく違った自然やその有り様を見ることができ、物の見方や考え方が広がったような気がしています。機会があれば、ガラパゴス諸島やイースター島に行きたいというのが、私の夢です。

 そんな夢を持ちながら、今日もまた、子どもたちの夢をかなえるための学校生活を送っています。
 

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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