暑い夏が続いています。高温注意報が出ている地域もありますね。どうぞ、気をつけてお過ごしください。
ところで、この夏に私は様々な体験をしました。夏休みは、普段できない体験をするのにもってこいです。それは教員にとっても同じです。
体験をすることで、その感動を子どもたちに伝えることができます。感動というエネルギーをためておくことも、教員にとっては大事な研修と言えるのです。
夏休みに入って間もなく、私は清里に旅行しました。何回かお世話になったことがあるホテルでは、夜、ピアノコンサートが開かれました。そこで若手のピアニストが、リストの30分間にも及ぶ大作を演奏してくれました。若い頃、リスト音楽院の先生から指導を受けた経験があるのにもかかわらず、リストの作品を真剣に聴いたことがなかったのです。ハンガリーの皆さんが、リストを誇りに思っていらっしゃることが、よくわかりました。折しも今年はリスト生誕200年だそうで、たくさんのコンサートが予定されています。また、聴きに行きたいと思っています。
それから、娘たちと関西方面に行きました。そして、京都観光をしました。清水寺や金閣寺は、何度も行ったことがあるのに、今回は清水寺からの景色や金閣寺の池の広さなど新しい発見がありました。
その後、渡月橋にも行きました。娘は桂川を歩いて渡るというので、つい私も一緒に川に入りました。深さは5cmほどしかないのに、川底がぬるぬるしていて、転ばないように歩くのが大変でした。ところどころ深くなっているところがあり、そんなところに足を取られはしないかと、ドキドキしながら渡りました。
幼少の頃、お転婆だった私は、福島の川に入って遊ぶのが常でしたが、年々バランスをとることが難しくなっているんだなと、ちょっとがっかりもしました。
夕方旅館に着くと、娘が驚きの声を上げました。なんとその旅館は、娘が中学校の修学旅行でお世話になったところだったのです。旅館を歩き回って、娘は思い出を楽しんでいるようでした。修学旅行では、京都のタクシーで寺院巡りをし、運転手さんにも大変お世話になった話などを、懐かしそうに語ってくれました。
翌日は、甲子園球場に行きました。第一試合が東京の代表だったので、早起きして出かけました。
私は、高校野球の大ファンで、毎年高校生の溌剌とした活躍に拍手を送っている一人です。テレビで観るのとは大違いで、清々しい浜風を感じながら、他のお客さんと一体になって応援できました。帰りには、お気に入りの高校のプラカードを持って記念撮影。30年越しの願いがかないました。
2学期になったら、子どもたちから夏休みの思い出を聞く機会があるので、その時に、自分の経験も語ってやりたいと思っています。
ただ、清水の舞台から見える景色や金閣寺の池の広さ、渡月橋の川の美しさを伝えきれるものではありません。また、甲子園球場での観戦も同様です。「百聞は一見にしかず」とは、うまく表現したものだと感心させられます。
これは笑い話ですが、ある先生が、保育園の子どもたちに花見をさせてやろうと、全国の花見の名所をビデオで見せたそうです。大人であるならば、自分の経験と映像を結びつけて楽しむことができるビデオも、子どもたちにとっては現実の体験とはなりえません。視覚のみならず、たくさんの感覚から学ぶことが大切です。
小学校でも、体験から学ぼうという取り組みが、広がっています。
見て、聞いて、触れて、感じて、味わって・・・。そして考えて。体験からしか獲得できない学びを、積み重ねっていってほしいと願っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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