夏休みに入ってから、涼しい毎日が続いています。こんな過ごしやすい日にこそ授業があればいいと思いますが、なかなかうまくいきませんね。
東京では、6月下旬に梅雨明けしてから終業式までの3週間余り、教室の気温はしばしば30度を超えました。本校では特別教室の一部にしかクーラーがありません。私が受け持つ6年生の教室は4階にあり、普通教室には天井に取り付けられた2台の扇風機があるだけです。その上、南風が強くて窓を開けられない時間帯が長くて、風通しの悪い中で授業を行ってきました。
ですから、学習に集中させるのが難しい上、熱中症を防止するために気を遣う日々が続きました。今年は水でぬらして首に巻くようなスカーフを購入する家庭が多かったので、安全面を配慮して使用を認めたり、校庭の気温が35度を超えると外遊びを禁止したりしました。それでも毎日6時間の授業を行っていくのは大変でした。
残暑が厳しいという長期予報も聞かれますが、元気に2学期を始められるようにと願っています。
さて、夏休みに入ると友人などから、「先生は、夏休みがあっていいね」とか、「夏休みは暇でいいでしょ」などと言葉をかけられることがしばしばあります。
確かに、授業がある期間は分刻みで行動しなければならないため、休み時間さえ打ち合わせに走り回るような忙しさがあります。冗談のように聞こえるかもしれませんが、水を飲む間も、トイレに行く時間もありません。身体に悪いなと思いながらも、バタバタと過ごすことが多いのが実態です。
しかし、夏休みになると、自分でスケジュールをコントロールすることができ、心も身体も少しの余裕ができるなと感じます。
ただ、7月下旬から8月上旬は水泳指導をする小学校が多く、最近では補習授業も積極的に行われています。それ以外にも、まとめてやってしまわなければならない事務的な仕事があります。また、学校内の整理整頓や畑の草むしりなども、夏休み中に行われます。研修会が各地で開かれるので、それらに参加している教員もいます。ですから、お盆休みに骨を休める程度です。
とはいえ、教員がどのような一日を送っているのか、ある日の出来事をお伝えしましょう。
朝の打ち合わせを終えて、隣のクラスのA教員(20代の男性)と、2学期の家庭科で制作するエプロンの試作に取りかかりました。教室にミシンやアイロンを持ち込み、布を裁断した後、ミシンで縫っていきます。ミシンの糸のかけ方や下糸の入れ方、糸の始末の仕方なども、二人でひとつひとつ確認していきました。
数年前までは、家庭科の教員が配置されている学校が多く、私も何度か高学年を受け持ったものの、家庭科を教えることがほとんどありませんでした。しかし、学校の規模が小さくなってきていることで専科教員の人数が減っており、久しぶりに家庭科の教材研究を余儀なくされているという訳です。
さて、エプロンがほとんど仕上がった頃に、子供たちが補習にやってきました。エプロン作りを家庭科室で行わなかったのは、教室にやってくる子供たちを待つためです。
算数の課題を終わらせようと、子供たちは我々に質問をしながら集中して勉強します。夏休み中の補習では、二人の教員がどちらのクラスの子供たちにも深く関わって、勉強を教えているのです。
昼近くになってから、6年生の補習をA教員に任せて、私は5年生のB教諭(20代の女性)と共に近くのスーパーに買い物に行きました。5年生の2学期の家庭科で行う、白玉団子作りの材料を買い求めるためです。
学校に戻ると、補習に来ていた6年生の子供たちを誘って、白玉団子を作りました。白玉粉と豆腐を混ぜて団子を作る方法は、もう10年以上も前に教わったのですが、今では白玉粉のレシピにも載っています。それで、白玉粉に絹豆腐を混ぜ合わせてこね、団子作りをしました。ゆで上がった団子には、あんこをかけて美味しくいただきました。
このように、実際に作ることを通して、若手教員と一緒に教材研究をすることも、我々世代の大事な仕事なのだろうと思います。日頃はゆっくりと教えてやることができない事務仕事も、夏休み中は丁寧に教えることができています。
まだ夏休みは続くので、時間を計画的に使って、2学期に向けた準備をしていこうと思います。そして、なるべく若手のために、指導してやれる時間を作りたいと思っています。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)
特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com
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