運動会・・・その学校らしさを(その3・組体操は消え行くか?)
運動会シリーズも今回で最後となる。最後は、現任校と前任校の運動会のことに触れたいと思う。特に今回は、私自身の考えが濃くなるかも知れないので、そのあたり差しい引いてご高覧いただければ、と思う。(教頭という立場になると、「私見」を弄するのも大変気を遣うことが最近ようやくわかってきたのだが・・・。)
ではクイズです。前任校(全校児童170名くらい)でも現任校の厚沢部小学校(同じく135名)でも共通して行われている競技は何でしょう?
1 低学年による玉入れ
2 4年生による騎馬戦
3 高学年による組体操
正解は、、、3の組体操である。意外と思うかどうかはさておき、最近は児童の安全面の配慮からやらなくなってきている競技である。
高学年の担任として指導に携わってきたが、まずもって言わせてもらえば「危険極まりない!」競技だ。よく言われる「最近の子どもは体格ばかりよくなって、筋力が・・・」これは事実として言える。特に肥満傾向の児童の増加である。肥満気味に見えても実はがっちりして筋力がある、というのならよい。こういう児童は、ピラミッドなどの大技の土台としてしっかりと活躍できる。
そうではなく、ただ単に運動不足または食生活の乱れでの肥満傾向。ピラミッドの上にはできないし、土台として期待すると筋力不足からすぐつぶれてしまう。
さらにつぶれた後が問題だ。いくら安全面に配慮し、丁寧に指導を積み重ねてもここで起きるのが「けが」。上の方から落ちた場合、受け身が不十分で変な腕の着き方をして、最悪の場合骨折もある。
これでは、日本中の学校が組体操を敬遠するのも無理はない。がしかし、、、。もともとできないことをできるようにするのが学校であるなら、この組体操にも大きな教育効果はあるはずである。
指導の初めは大変である。腹筋や腕立て伏せが一回もできない子はざらである。そんな児童にも、時には叱咤しながら指導し、最後にはV字バランスや倒立などを完璧な形でやらせるのだ。
1人技が終わったら2人技だ。気が合わない、のではない。気を合わせるのだ。2人技の次は3人、5人、10人技。このあたりまでくると、教師の出番は陰をひそめ(安全面のみ)子どもたちが声を掛け合いながら技を完成させていく。
そして全員技、大技である(動画サイトで色々見られます)。
初めは、子どもたちも「ムリムリー」という感じだったのが「あれ、もしかしたら? 意外といけるね」となり、そして総練習のころは失敗は「ほぼ無く」なり、本番では誰よりも誇らしい顔で演技できるようになる。(私を見て! 状態である)
ネット上で運動会についての質問サイトを見ると「組体操は北朝鮮の真似事」などという意見もあった。やらされている、という感が強い学校ならそれもそうだろう。
しかし、低学年から「ぼくたちも6年生になったら、あの技ができるんだ!」という気持ちをもたせたり、そして実際に、6年生になったら「今年は新技(新しい技やオリジナルの技)でお客さんを驚かせようぜ!」
と子どもたちにやる気をもたせたりできたら、決して北朝鮮とはならない。そのことは、本番での子どもたちの真剣なそして暉やく眼差しが何よりも雄弁だ。小学生とは言え、力強さや集中力が高まってくる高学年ならではの競技となる。
力を一つに結集して築きあげる組体操の大技。日本の学校らしい運動会競技ではありませんか!
日本らしさに誇りを!

久慈 学(くじ まなぶ)
厚沢部町立厚沢部小学校 教頭
北海道で小学校教員、今年は教頭職三年目。ニューデリー日本人学校での経験を生かし、片田舎から世界を、世界から片田舎を見つめつつ発信したいと思います。
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