前回「AKB48で学級づくり」と題した日誌を公開しました。その中で、学習活動において「表と裏のねらい」を持つことの大切さとその意義について書きました。
その視点に立つと、「AKB48で」というのは、『表』なのです。私が注目しているのは、実はAKB48の総合プロデューサーである秋元康氏であり、彼の考え方や実践に沿う形の「秋元康氏流で学級づくり」を実践しているのです。つまり、『裏』があったのです。
秋元康氏は、高校時代から放送作家として頭角を現し、「ザ・ベストテン」「オールナイトフジ」「夕やけニャンニャン」などの番組構成を手がけました。また、1983年以降は、作詞家として、美空ひばり『川の流れのように』をはじめ、中島美嘉『WILL』、EXILE『EXIT』ほか、数々のヒット曲を生み出しています。さらに、とんねるずやおニャン子クラブの仕掛け人とも言われ、新聞・雑誌の連載など多岐にわたり活躍しています。一方、教育にも関心があり、2005年に京都造形芸術大学教授、2007年には同大学副学長に就任しています。
こうした秋元康氏のどこに学ぶのかというと、彼の「AKB48のプロデュースの考え方」(実践)なのです。私が着目したものは、以下のようなことです。
(1)集団を前面に出しながら、「集団という名の個を育てる」。
(2)最大公約数的な誰にでも受けるものでなく、「最小公倍数的なつくり」。
(3)劇場という非常に「アナログなものに基盤」を置く。
(4)他ではシードされない子の「一生懸命さ」と「仲間意識」を育てる。
(5)ファン投票により選抜メンバーを決める「選抜総選挙」の実施。
(6)勝者を固定せず、活性化させるための「じゃんけん大会」の実施。
ところが、この秋元康氏のAKB48をプロデュースする考え方が、私の教育実践と実に重なるのです。前述の秋元康氏の考え方(実践)に合わせてみましょう。
(1)個も集団も伸ばす「チームによるまるごと教育」の実践(写真 右)。
(2)個のよさをつなぐリレーションと、独自教育の実践と波及。
(3)教育の不易である「音読暗唱」や「視写」の重視(写真 中)。
(4)日本人のよさの認識や我慢・努力・作法などを教える(写真 左)。
(5)学校評価や客観評価を受け入れる。
(6)どの子(特に普通の子に注目)も伸ばし、クラスの活性化を図る。
おもしろいもので、全く世界が異なると思っていた芸能界と教育界が、驚くほど対比となって表れてきているのです。手前みそで自分勝手ですが、こう考えると、本当にワクワクするものがあります。ますます教育を楽しみたくなりました。
私は今年度、クラスの子の三分の一が持ち上がりの学級を担任しています。その子たちが、現在のクラスのリーダーになって、自分もチームもクラスも育ててくれています。この状態も現在のAKB48の様子(リーダーが抜けると、新たなリーダーが自然とできる)と似ています。
私は、教育界の秋元康氏を目ざせたらよいと思っています。つまり、これからの時代を担う子どもと子どもたちを、最高の状態にプロデュースするということです。
そういえば、秋元康氏は、「不器用な人の方が、軸がぶれないので成功する。」と言っていました。私は確かに不器用ですから、大いに可能性があると(勝手に)思っています。
このように、実践や現状をポジティブにとらえ、ますます教育を楽しんでいきたいと思っています。2学期が待ち遠しいです。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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