様々なアーティストによるコンサートでは、そのアーティストとファンとの一体感から、創ろう・高まろうというようなすごいパワーを感じます。
国民的なアイドルとも言えるAKB48は、老若男女、知らない人はいないと言っていいぐらいですが、2005年に誕生した当時は、一部のマニアのみに支持されるグループで、あまり期待もされていなかったそうです。そのAKB48は、今や一時代の象徴ともなりつつあり、この人気の潮流はしばらく続くことでしょう。
このように、単なる一発屋ではなく、ブームが続く「流行」には何か秘訣があり、そこには「不易」につながる『何か』があるのではないかと考えています。
そのようなことを考えつつ、今年度は「コンサートのパワー」と「AKB48ブーム」を活用した『学級づくり』を行っています。つまり、コンサートのように「目的を共有し、気を高め」られる学級づくりを「AKB48的手法」を用いて展開しているのです。具体的には、『AKB48で未来の種を蒔く教育』を試みているのです。これが、今年度の「まるごと教育」であり、「まるごと教育2011」なのです。
では、何を考え、何を実践しているのかを紹介します。
何が、AKB48なのかと言いますと、学級づくりと授業づくりを一体化させた学級経営の柱の頭文字がAKB48なのです。つまり、こういうことなのです。
A:あいさつ・ありがとう
K:興味関心を引くツール(技術)
B:バランス
48:四十八手の裏表
Aの「あいさつ・ありがとう」とは、教育の根本を代表するものであり、『教育の不易』の象徴としてとらえるのです。教師が率先して「あいさつやありがとう」を言うようにして、学級づくりのベースにするものです。時には、強制も必要ですが、基本的には自発的に言えるような環境づくりに全力を傾けます。教師がどの子よりもあいさつをして、ありがとうを言うことにより、少なくとも子どもの意識が変わってきます。すると、何人かは教師のまねをするようになります。そして、少しずつその輪は広がっていきます。こうすることで、少しずつ「気」を共有していくことになるのです。
Bの「興味関心を引くツール」とは、ちょっとした教育技術(ミニネタ)であったり、ICTの活用であったりといった、いわゆる『教育の流行』を取り入れたものです。子どもはもちろん、教師自身が楽しめるものを取り入れます。授業の導入時に、フラッシュカードを使ったり、半具体物・具体物を多用したり、いわゆる流行の物や曲やギャグなども使って、子どものモチベーションを高めたり、持続するようにしています。もちろん、教師の目ざす目的に、子どもが必然的に向かえるように仕掛けることも必要です。
Bの「バランス」とは、45分の授業のデザイン(授業構想)において、100%教科のねらいに向かう授業をするのではなく、常に授業づくりと学級づくりのバランスを考えた上で構想するという考えることを言います。たとえば、授業中では、発表の内容だけを問題にするのではなく、話し方や聞き方のマナーをみんなでつくり、それを守ることにも重点を置き、関係性も育てていくことです。また、テストにおいては、自分自身と真剣勝負し、テストができればいいだけでなく、他の迷惑になるようなことは当然のようにしない態度を育てていくのです。つまり、45分の授業において、授業づくりと学級づくりを一体化させ、その割合は単元・教材・実態等に合わせて、可変的に変えて、子どもと子どもたちの学力と関係性を最大限伸ばすようにするということです。
48の「四十八手の裏表」とは、相撲用語からきていて、相撲の四十八手にそれぞれ表と裏があるとされていることと同様に、全ての教育活動には、表の裏のねらいがあって、教師はその両側面を意識して指導に当たるようにすることを言います。たとえば、運動会においては、運動会を成功させるというねらい(表のねらい)だけをもって臨めば、運動会が終われば、全てがエンドになってしまいます。教育は系統的に、重層的スパイラルに高めていくものでなければならないものです。そこで、暑い中でも我慢して練習できる、常にフェアに行動する、自分の思いを精一杯表現するといった「裏のねらい」を設定するのです。そうすれば、運動会が終わっても、裏のねらいが「次に活きる」ことになるのです。
こうした『AKB48で未来の種を蒔く教育』の1学期が終わりました。十分とは言えませんが、子どもと子どもたちは着実に育ってきています。つまり、「自ら勇気を発揮し、みんなで伸びる」学級に着実に近づいてきています。
今、夏休みで子どもたちに会えないのが残念ですが、新学期に向けて「AKB48での学級づくり」が、さらに進化を遂げられるように十分な充電をしたいと思っています。
大谷 雅昭(おおたに まさあき)
群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。
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