2011.07.22
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何のために勉強するのか

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭 大谷 雅昭

 夏休みを前にして、「何のために勉強するのか?」という学校教育の根本とも言えることを、考えて知る学習を行いました。知っているようで、知らないことの一つに、この根本的な課題があるのではないでしょうか。

 毎日、当たり前のように学校で勉強し、家庭で宿題などをしている子どもたちに
「なぜ、勉強をするのでしょうか。」
と聞くと、次のような答えがすぐに返ってきました。
  ・大人になって、分からないことがあると、はずかしいから。
  ・頭がいい人になるため。
 ・大人になって、こまるから。
  ・読み書きができないと、たいへんだから。
 ・頭を回転させるため。
  ・ちゃんとした人間になるため。
 ・バカだと思われるから。
  ・いい大人になるため。
 ・世界のきまりだから。

 子どもたち全員の答えを聞いた後、
「みんなの答えは間違えではないですが、本当の答えでもないですね。今日は、特別に答えを教えましょう。」
と、ちょっともったいぶって言いながら、私の用意した答えを教えました。
「なぜ、勉強するかというと、『自分の夢をかなえる』ためなのです。」
と。
 子どもたちは、一応に納得した表情をしましたが、具体的ではありません。そこで、
「たとえば、サッカー選手や野球選手などのスポーツ選手は、そのスポーツだけやっていれば、尊敬されるようなすごい選手になると思いますか。」
と、聞きました。子どもたちは、
「思いません。」
と、すぐに答えましたが、理由までは分からないはずです。
「サッカー選手は、外国のチームに入りたがりますが、なぜだと思いますか。それは、外国のチームの方が強く、すごい選手がいるからなのです。日本の選手も、そういうすごいチームや選手と一緒にプレーして、本当のすごい選手になりたいから、外国に行きたいのです。しかし、外国に行っても活躍できるような選手は、ほんのわずかなのです。どういう選手が、『自分の夢をかなえ』がんばれると思いますか。」
という話や質問をしながら授業を進め、スポーツ選手で、外国でも活躍しているような有名な選手は、あっという間に外国語を覚えてしまっていることを紹介しました。
 例として、子どもたちから名前が挙がったサッカーの長友選手のことを話しました。彼は、イタリアの名門チームであるインテル・ミラノに所属していますが、2011年1月の移籍後、すぐにイタリア語を覚えてしまったそうです。そのため、ザッケローニ監督とダイレクトでコミュニケーションがとれるので、日本代表チームで通訳としても活躍し、それが好成績にもつながったとも言われています。
 ちなみに、キーパーの川島選手は、英語はもちろんのことオランダ語、ポルトガル語、イタリア語もできるそうです。

 このようなことを話してから、子どもたちには、「自分のゆめ」を書いてもらい、その上で、『大切なことは、夢を持ち続け、勉強も続けることである』とまとめ、行動目標を書いて発表してもらい、授業を終わりました。

 私は、キャリア教育を特別な時間の特別なことととらえて、指導するのではなく日常と関連づけたいと考えています。その一つがこの授業です。
 子どもたちは、暑く長い夏休みにも、自分の夢を育んでくれるものと思っています。
 

大谷 雅昭(おおたに まさあき)

群馬県藤岡市立鬼石小学校 教諭
子どもと子どもたち、つまり個と集団を相乗効果で育てる独自の「まるごと教育」を進化させると共に、「教育の高速化運動」を推進しています。子ども自身が成長を実感し、自ら伸びていく様子もつれづれに綴っていきます。

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