期限を決めることで、自らの退路を断つ
今年度で3年目を迎えた、本校の学校改革。トップダウンで始まった改革ですが、経営者側から「選ばれる学校にせよ」というゴールが示された以外、具体的な行動についてはすべて現場教員からなるプロジェクト委員会が中心となって進めています。コアメンバーは5人で、管理職は含まれていません。まずは、最前線で活躍している教員が、現状や体制等に縛られない自由な議論をすることで改革の糸口を見出し、各方面からの検証を加え、提言にまとめ上げていくという形をとってきました。
改革を始めるにあたり、まず共通認識を図ったことは「期限」を定めるということでした。過去何回となく改革らしきものが行われてたようですが、全て中途半端な形で、小手先の改善だけに終わっています。理由は、いつまでという明確な期限が決められていなかったことと、担当者の異動などで年度をまたいだ議論が続かなかったからです。
今回それでは困ります・・・と言うより、学校全体に「変革」(私たちは「進化」と呼んでいます)をもたらすことが至上命令でしたので、最初に「3年で体制をつくり、6年後には結果を出す」ということを内外に宣言しました。我々自身もいわば「退路を断った」状態で改革に着手したわけです。
以来、日常業務をこなしながら、一方で改革に向けての取り組みも並行して進め、約束の3年目。ここで、目に見える形として「学校が変わる」ことを示さなければなりません。さて、それができるのか・・・。
できました!
まだ細かな部分は調整が必要ですが、いままでのコース制を見直し、高校新教育課程をいち早く取り入れた「より進化した学び」の体制が完成しました。現在、その中身を学校説明会等で外部に向けて発信しているところです。
先日、ある学習塾の先生から「今回の説明会は非常に内容のあるものでした。学園が変わろうとしている予感です。今年はあらゆることが動き始めています。来年の入試は動くと思います。」といった感想をいただきました。正直、感激しました。と同時に、これからが正念場だと思いました。次に待っているのは、あと3年で結果を出すこと。期待感を持っていただいた以上、当然です。
改革の細かなことをここで書き出すとキリがありませんので、次回以降少しずつ、その概要について述べていきたいと思います。
改革のベースとなった「私案」
学校改革プロジェクトが始まる前年度の2月、『主人公は子どもたち・・・地域のため、生徒のための滋賀学園に! -これからの滋賀学園中学・高等学校を考える-』と題した提言を理事長に手渡しました。赴任して以来、感じていたことを分析し、自分なりに今後の具体的な取り組み指針をまとめた、いわば「新しい学校づくりの私案」です。
毎年、学校の課題に対して全員にミニレポートの提出が義務づけられていましたが、あくまでも単年度ベースの総括程度の意味合いしかなく、これではダメだと個人的に作ったもので、これをきっかけに学校改革が始まればという期待もどこかにありました。その辺りを察知されたのか、翌年度になって改革の声が経営者側から出され、プロジェクトが始まりました。実際はずっと考えておられたようですが、現場から声が上がったことで踏み切るきっかけになったとのことです。
さっそく、現場から5名の改革メンバーが選出され、最初の会議で誰かがそのリーダーを務めることになりました。言われるまでもなく自分がその役に就きたいと考えていましたが、誰も進んでやろうとしないのには驚きました。だって、こんなワクワクするようなチャンスってないでしょう。たぶんメンバーには、責任を取りたくないという守りの姿勢があったんだと思います。結果、私がリーダになり、以後の改革を牽引していく立場になりました。直接は指示されませんでしたが、トップの意向も同様だったらしく、管理職にも事前に話をしていたようです。
さて、その私案ですが、改めて読み返してみると、多くの点でプロジェクトを進めていく思考のベースになっていることに気づきます。
(1)学校の体制と組織・運営
学年主体の学校運営、管理職の役割、校内情報の有機的連携(校内データバンクの構築)
(2)心の教育
学級通信、現場重視・人間重視の教育、 五感をフルに使った「真正面からの人間教育プログラム」
(3)授業の工夫と進学指導
コース制の弊害、自然学級とコース制、午後からのコース制、飾りのない真の普通科、 中学校の建て直し
(4)生徒募集に関わること
(5)父母との連携
(6)地域から認められる学校、地域に愛される学校へ
ざっと以上のような項目で、具体的な方策について述べています。最初に勤めた学校で20年間、いろいろな仕事を担当してきて感じたこと。そして、いったん学校を離れたことで見えた社会的な視点。その上で再び学校という世界に戻り、何が必要で、どこをどう改善すべきか・・・。現状に照らし合わせ、自分なりに分析したことが、いまになって生きてくるとは思ってもいませんでした。
スペースがあれば、私案についても具体的に少し触れたいところですが、改革の概要を紹介していくのに合わせ、そのあたりも含めてお話ししていけたらと思っています。

安居 長敏(やすい ながとし)
滋賀学園中学高等学校 校長・学校法人滋賀学園 理事・法人本部事務局 総合企画部長
私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立、同時にパソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、21世紀型教育のモデルとなる実践をダイナミックに推進中。
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